移動スーパー「とくし丸」はなぜ“独走”しているのか 1000台突破の舞台裏:週末に「へえ」な話(2/5 ページ)
移動スーパー「とくし丸」の業績が好調である。クルマの稼働台数はぐんぐん伸びていて、売り上げも右肩上がり。「買い物難民をなんとかできないか」といったコンセプトでスタートしたこのビジネスは、なぜここ数年で伸びているのだろうか。同社の社長に話を聞いたところ……。
見込んでいた数字を下回る
それにしても、なぜここまで伸ばすことができたのだろうか。とくし丸の新宮歩社長(2020年に就任)に、これまでの歴史を振り返ってもらったところ、順風満帆ではなく、見込んでいた数字と懸け離れることに。
とくし丸は16年に、転機を迎える。事業を拡大させるために、食品のサブスクを手掛ける「オイシックス・ラ・大地」の子会社に。当時(5月末時点)のクルマは136台だったが、19年に500台の数字を見込んでいた。わずか2台でスタートしたにもかかわらず、4年ほどで100台を超えていた。このことに手ごたえを感じていて、勢いにのれば500台も不可能ではないとソロバンをはじいていたのだ。だが、しかしである。5月末時点で404台にとどまったのだ。
なぜ、このような事態に陥ってしまったのか。繰り返しになるが、とくし丸のビジネスモデルは、B2B2B2Cである。スーパーにノウハウを提供して、スーパーが販売パートナーに商品を提供して、販売を委託する。販売パートナーはお客の自宅を訪問して、商品を販売する。つまり、“4者の関係”がよくなければ、ビジネスがうまく回わらないといった世界なのだ。
スーパーの経営がうまくいっていても、ドライバーの営業がイマイチであればうまく回らない。当然、逆も然りである。そうなってはいけないので、業務フローをきちんと決めて、成功事例などを共有しなければいけないのに、そこに“落とし穴”があった。例えば、とくし丸の優秀なドライバーが情報番組などで報じられたとしよう。その人は人柄がよくて、お客からの信頼もある。しかし、事務処理の仕事が苦手だと、営業に回る時間がどんどん削られていく。
また、スーパーとの関係性も重要である。コミュニケーションがうまくとれていないと、「あの人とは仕事をしたくない」となって、当然ぎくしゃくする。全国各地でこのような課題が生じていたにもかかわらず、必要な情報がきちんと共有されてこなかったのである。
結果、どういったことが起きたのだろうか。「全体のバランスが崩れていました。お客さんの前で、営業が上手な人ばかりが増えてしまいまして。もちろん、営業が上手なことは大きな武器になりますが、それだけではダメなんですよね。
学校の勉強に例えると、3教科のうち1教科が100点で残りが赤点ではいけません。赤点をとらずに、3教科とも80点以上をとれる。そのような人材になれるように、育成にチカラを入れていきました」(新宮さん)
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