移動スーパー「とくし丸」はなぜ“独走”しているのか 1000台突破の舞台裏:週末に「へえ」な話(4/5 ページ)
移動スーパー「とくし丸」の業績が好調である。クルマの稼働台数はぐんぐん伸びていて、売り上げも右肩上がり。「買い物難民をなんとかできないか」といったコンセプトでスタートしたこのビジネスは、なぜここ数年で伸びているのだろうか。同社の社長に話を聞いたところ……。
ビジネスモデルが違う
この疑問に対して、新宮さんは「ビジネスモデル」と「アナログ」という2つのキーワードを口にした。ネットスーパーととくし丸の違いはビジネスモデルにあって、スーパーで買い物をするには、客は店まで足を運んで、商品を手に取って、レジで会計をしなければいけない。そして、それらを袋に詰めて、家に持ち帰る。一連の流れを前提にして、価格が設定されているのだ。
こうした背景があるので、スーパーで販売している価格のままでやっていくのは難しい。というわけで、「配送料」は欠かせない。スタート時は多くのお客を獲得するために「配送料0円」にして、ある程度の数を確保することができれば「有料」にするケースがある。しかし、有料化に踏み切ると、客離れが起きて、たちまちビジネスがうまく回らなくなることもあるのだ。
一方のとくし丸は、先ほど紹介したように配送料ではなく、1品につき10円または20円を加算している。というわけで、モノによっては「配送料のほうがトク」かもしれないし、「上乗せのほうがトク」かもしれないので、一概にどちらのほうが有利と判定することはできない。
では、なぜとくし丸は配送料ではなく、上乗せという形にしているのだろうか。クルマに載せる商品はドライバーが選んでいたり、お客に合わせた商品を提案したり、御用聞きもしていたり。このような役割を担っていることから、「配送料」という言葉を使っていないのだ。
あと、人の配置の問題もある。「昨日の注文は10件あったけれど、今日は2件か」となると、担当者の仕事は5分の1ほどになる。単純な計算になるが、昨日の仕事量と比べて、5分の4ほど遊ばせてしまうことになる。一方のとくし丸は、週2回、お客の自宅を訪問する。これは決まっていることなので、遊んでいる時間が基本発生しないことも大きいようだ。
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