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クルマの顔つきは、どこまで売れ行きに影響するのか高根英幸 「クルマのミライ」(1/3 ページ)

デザインには、人の心を動かす力がある。それはクルマであっても同じで、これだけ自動車市場が充実して性能や品質が粒ぞろいの中にあっても、デザインは売れ行きを決める重要な要素であり続けている。

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 デザインには、人の心を動かす力がある。それはクルマであっても同じで、これだけ自動車市場が充実して性能や品質が粒ぞろいの中にあっても、デザインは売れ行きを決める重要な要素であり続けている。

 だから、というわけではないがカーデザインの現場は、現在もけっこうアナログな部分が残っている。まずデザイナーは新型車のイメージをラフスケッチで描いていく。紙に色鉛筆で描く人もいれば、ペンタブレットを使ってモニターを見ながら線と面を創り上げていく人もいる。どちらにせよ、最初はデザイナーの手描きだ。


三菱ふそうのデザインセンターで行なわれているクレイモデル製作の実例。スケールモデルから採寸した情報から原寸大のクレイモデルを切削マシンで削り出していく。最終的な仕上げと微調整はデザイナーの感性とクレイモデラーの職人技となる

 そこからイメージが決まってくると実際の寸法や機能を考慮したデザインへと、デザイナーは詳細に描き込み仕上げていく。そして5分の1程度のスケールでクレイモデルを製作し、立体モデルとしてさまざまな角度から眺める。こうやってデザインが定まってくると、実物大のクレイモデルを製作するのだ。

 現在ならPC上で上下左右360度回転させてスタイリングを眺めることもできる。20年ほど前からクレイモデルレスの工程を採用するメーカーも出現し、トヨタなどは100%クレイモデルレスでデザインが完成されている。一方で、マツダや三菱ふそうなど、未だにクレイにこだわるメーカーも少なくない。

 人間の感性に訴えかける部分は、リアルなモデルで研ぎ澄ませたいというこだわりもあるが理由はそれだけではない。なぜならスケッチと違い、3Dモデルには正確な寸法が必要であり、そのためにはクレイモデルを作成する方が効率がいい場合もあるからだ。

 クレイモデルレスのシステム開発にはかなりのリソースを割く必要がある。市販のソフトウェアそのままでは、自動車メーカーの求めるクオリティには達していないのである。

 クレイモデルの製作自体は1930年代にクルマのデザインに持ち込まれてから、大きくは変わっていない。ただし作業を効率化できる工程はかなり機械化、自動制御が導入されている。

 例えば5分の1のクレイモデルで検討した後に、原寸大のクレイモデルを作る際には、スケールモデルを採寸して大型の切削機械で全体のフォルムを削り出していく。手作業ではとてつもない労力となる工程を機械化することで、時間と労力の削減を実現している。

 昔は定盤の上で作られたクレイモデルを型取り用のゲージなどを使って寸法取りしていた作業も、三次元測定器を使うようになってからはポイントごとに当てるだけで測定が可能になった。現在は3Dスキャナーをクレイモデルの表面に当てるだけで、精密な測定が瞬時にできる。

 こうしてラフスケッチから生まれたデザインは図面となり、金型を作り出せる環境へと続いていくのである。

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