日本企業が失った、佐々木朗希のような「じっくり育成法」 どうしたら取り戻せるか?:上司は何をしたらいい?(2/4 ページ)
プロ野球3年目で完全試合を達成したロッテの佐々木朗希選手のような“じっくり育成法”を、「企業も参考にすべきだ」という声が多い。だが、よく考えて見ると佐々木選手のように「1〜2年目は育成期間と位置付け、3年目に独り立ちさせる」のが、一般的な日本企業の育成方法だったはずだ。日本企業はなぜ、人を育てる力を失ってしまったのか。どうしたら取り戻せるのか。
実際の“Z世代”の育成現場では……
実際はどうなのか。中堅倉庫業の人事担当者は「本来のOJTはできていない。日々の業務を見ているだけという上司がほとんどではないか。大企業の中には育成プランに基づいて担当者が指導しているところもあるが、多くの中小企業では新入社員が入ってくると『先輩のお前が面倒を見ろ』と言われ、OJTのやり方も教わらずにやっている程度ではないか」と語る。
普段OJTを実施している企業でも、リモートとなるとさらに困難を伴う。教育研修会社の幹部は「オンラインによるOJT研修を行っている企業もあるが、リアルと違い、指導する側の熱や細かいニュアンスが伝わりにくい。指導する側が自分の思いを言語化し、表現する力が高くないと理解されにくい。そうしたスキルを全員が持っているわけでもなく、結果的に育成のレベルが弱まっていく可能性があり、リアルで行うOJTは必要だ」と指摘する。
企業はこうした状況の中で、“Z世代”でもある22年の新卒社員を迎え入れている。しかも彼らの多くは、大学生活の大半をコロナ禍に過ごしている。大学3年になった直後の20年4月初旬に緊急事態宣言が発出されて生活は一変し、大学から閉め出され、講義はオンラインに切り替わった。さらにリモート就活を強いられ、インターンシップや会社説明会・選考もオンラインになった。リアルのコミュニケーションの経験が例年になく少ない。
自宅に閉じこもる自粛生活を余儀なくされたことで、リアルのコミュニケーションが極端に減り、社会人のイメージが描けないという先行き不透明感を抱え、将来に対する不安感や危機感を敏感に感じ取っている人が多い。前回の記事で触れたように“配属ガチャ”や“上司ガチャ”を極度に警戒している傾向が強く、会社への依存度が低く、自己の防衛意識が強いという特徴を持っている。
最近の新人の特徴について、ゼネコンの人事担当者は「社員アンケート調査を実施したところ、最近の新人は『40代以上の人と話をするのが怖い』ということが分かった。自分の父親に近い年代の人だと、話がかみ合わないし、丁寧に聞いてくれないので戸惑ったり、怖いと感じるようだ。特に現場に配属されると、職人気質の人が多く、職場がどうしても体育会的な雰囲気になる。打たれ弱い新人は、年配の社員と接するのを怖がる傾向がある」と語る。
そうした新人にどのように対応すべきなのか。
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