日本企業が失った、佐々木朗希のような「じっくり育成法」 どうしたら取り戻せるか?:上司は何をしたらいい?(3/4 ページ)
プロ野球3年目で完全試合を達成したロッテの佐々木朗希選手のような“じっくり育成法”を、「企業も参考にすべきだ」という声が多い。だが、よく考えて見ると佐々木選手のように「1〜2年目は育成期間と位置付け、3年目に独り立ちさせる」のが、一般的な日本企業の育成方法だったはずだ。日本企業はなぜ、人を育てる力を失ってしまったのか。どうしたら取り戻せるのか。
コミュニケーション方法や人選の工夫
前出の倉庫業の人事担当者は「上司や先輩は新人から話をさせるように仕向けることが大事。同じコミュニケーションでも部下と仲良くやろうと、上司が話をリードしようとすると、新人は口を閉ざしてしまい、決して本音は話さないだろう。新人の話を聞きながら上司は観察するという形のコミュニケーションがよい」と語る。
また前出の教育研修会社の幹部は「説明能力に長けた指導役を配置すべき」と語る。「仕事を任せるときに、何のためにやるのかという目的をしっかり理解させること、そのうえで成し遂げた結果が何につながるかという先を見せるなどちゃんと伝えることが大事だ。やらせてから分からせるというアプローチはおそらくうまくいかない。本人が理解しない状態で仕事を任せ、カベにぶつかると『どうして自分がこの仕事をやらないといけないのか、このまま続けて自分の力になるのか』という思考に陥りがちだ」
前出のゼネコンの人事担当者も同様に、育成担当者の人選には気を遣っていると言う。
「最大の特徴は聞き上手であること。じっくり話を聞いたうえで、今の仕事が本人のキャリアのために必要であることを丁寧に説明し、目指すべきゴールを設定してあげる。『今はムダな仕事だと思っているかもしれないがいずれきっと役に立つから』とか『今はつらいかもしれないが、だから君にやらせるんだ』と言って、本人と信頼関係を築き、やる気をかきたてるのがうまい人を選んでいる」
こうした人はコーチングの名手ともいえるが、なかなかできる人は少ないだろう。指導法を誤ると離職してしまう可能性もある。
そんな中で、特に注意したいのは“否定的な伝え方”だ。「『何をやっているんだ』『違うだろう』など、駄目出し比率の高いアプローチはうまくいかない。自分が否定されることに慣れていない人の割合が多く、否定的に伝えるとハラスメントだと感じる可能性もあり、離職してしまうかもしれない」(教育研修会社幹部)と警告する。
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