日本企業が失った、佐々木朗希のような「じっくり育成法」 どうしたら取り戻せるか?:上司は何をしたらいい?(4/4 ページ)
プロ野球3年目で完全試合を達成したロッテの佐々木朗希選手のような“じっくり育成法”を、「企業も参考にすべきだ」という声が多い。だが、よく考えて見ると佐々木選手のように「1〜2年目は育成期間と位置付け、3年目に独り立ちさせる」のが、一般的な日本企業の育成方法だったはずだ。日本企業はなぜ、人を育てる力を失ってしまったのか。どうしたら取り戻せるのか。
仕組みで解決 メンターは1人である必要はない
OJTの仕組みを工夫している会社もある。ある広告会社では、複数のメンバーでOJTを行っている。人事担当者は次のように説明する。
「職場に新人が入ると、マンツーマンのOJTリーダーを指名し、そのフォローを係長や課長に任せるのが普通だ。だが、リーダーが育成上手な人だといいが、下手をするとパワハラでもしかねない人を指名したら目も当てられない。当社では先輩、上司、他部署の先輩など5人ぐらいの社員のリストを渡し、『この中から、君が信頼でき、話しやすい人をメンターにしていいよ』と選ばせる。例えば『彼は君が今やっている仕事については詳しいよ』とか、『隣のセクションの彼女は君の大学の先輩だよ』と教える。新人はそれをヒントに自分の横・縦・斜めの位置にいる人から適宜メンターを選ぶ」
確かに相談相手が一人しかいないと、一度教えてもらったことを2度聞くのを嫌がる新人もいる。恥ずかしいというより、自らのプライドが許さないという感覚もある。だが放っておくとストレスがたまる。
しかし、メンター候補の中に1年上の先輩や隣の部署の先輩がいれば恥ずかしいと感じることなく質問できるだろうし、「俺のときはこうしたな」と解決方法を教えてくれるかもしれない。あるいは顧客とのトラブルで悩んでいることを相談すると「俺に任せろ」と言ってくれるかもしれない。
メンター候補を選ぶ段階で事前に候補者に「A君から相談があったら答えてやってね」と声がけしているという。同社のようにマンツーマン指導のOJT以外に、新人の性格を考慮し、メンターの配置など臨機応変に対応して仕組みをつくることも重要だろう。
近年は人手不足の業界も多く、「佐々木朗希のようなじっくり育成法が望ましい」といわれても、「そんな余裕はない」と考える経営者も多いかもしれない。しかし、OJTをはじめとする育成の形骸化は新入社員の早期離職を招き、結果として企業の成長力をむしばんでいく。
人材難や事業の停滞に悩む企業こそ、人材育成を見直す必要があるだろう。
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