増える“転勤拒否族”、揺れる企業のホンネ:“働く場所”の今とこれから(2)(1/3 ページ)
共働き世帯が増加し、生活拠点の変更を迫られる転勤が、社員の離職につながる危険性が増している。しかし、「転勤廃止」は全ての企業に現実的な策ではない。揺れる企業のホンネと、迫る課題の解決策とは──?
連載:“働く場所”の今とこれから
コロナ禍のテレワークの普及に伴い、従来の転居を伴う転勤制度を見直す企業が徐々に増えている。働く場所はこれからどのように変わっていくだろうか? 人事ジャーナリストの溝上憲文氏が、「強制転勤廃止」の流れについて解説する。
共働き世帯が増加している。それに伴い、生活拠点の変更を迫られる転勤は、生活設計や家族形成にも大きな影響を与え、社員の離職につながる危険性も増している。
労働政策研究・研修機構が実施した「企業の転勤の実態に関する調査」(2017年10月25日)では、転勤で困難を感じることについて、転勤経験者の正社員に聞いている。
各項目の「そう思う・ややそう思う」の合計の割合は、「介護がしづらい」が最も多く、75.1%。「持ち家を所有しづらい」(68.1%)、「進学期の子供の教育が難しい」(65.8%)、「育児がしづらい」(53.2%)、「子供を持ちづらい」(32.4%)、「結婚しづらい」(29.3%)と続く。
特に中堅層以上の社員に多いであろう、子育てや介護などが高い割合を示している。
また、エン・ジャパンの「転勤に関する意識調査」(1万539人回答、19年10月24日)によると、「転勤は退職のきっかけになる」と回答した人が31%、「ややなる」が33%。計64%に上る。
「今後、転勤の辞令が出た場合、どう対処するか」については「承諾する」が13%、「条件付きで承諾する」が50%であるが、「条件に関係なく拒否する」と回答した人が19%も存在する。世代別では30代が21%と最も多く、男女別では男性が16%、女性が23%に達している。
企業のホンネと目的
転勤拒否の傾向は、企業も十分に認識している。
関連記事
- NTT、JTB、カルビーも“強制転勤廃止” それでも多くの企業に残る課題
コロナ禍のテレワークの普及に伴い、従来の“転居を伴う転勤制度”を見直す企業が徐々に増えている。こうした転勤廃止の流れは、どこまで広がるのだろうか? 「日本型雇用」の歩んできた道を振り返りながら、“働く場所”の今とこれからについて、人事ジャーナリストの溝上憲文氏が考察する。 - 「週休3日制」は定着するのか? 塩野義・佐川・ユニクロの狙い
コロナ禍で働き方の自由度が増す中、選択的週休3日制の導入を検討する企業が増えている。選択的週休3日制は定着するのだろうか? 導入各社の狙いはどこにあるのか? 人事ジャーナリストの溝上憲文が解説する。 - 人事改革、続けて10年──日立がジョブ型移行プロジェクトに託した「思い」
ここ数年でジョブ型という言葉をよく耳にするようになった。日立製作所もジョブ型へ人事制度を転換し始めている企業の一つ。その中で、日立が特殊なのは、ジョブ型という言葉が広まるよりもずっと前から、人事制度の改革を行っていたことだ。およそ10年前に始まったというその改革の詳細とは──? - 「アニメ好き」がまさかの大活躍 毎年200人超が異動・兼業する、ソニーの公募制度がすごい
ソニーの社内公募制度では、毎年およそ200〜300人が異動や兼業をしている。「自分のキャリアは自分で築く」という意識が根付いているという背景には、どんな制度があるのか。人事担当者に話を聞いた。 - 崩壊寸前だったVoicy 離職率67%→9%に立て直した人事責任者が語る“人事の本質”
日本の音声コンテンツ市場の先頭を走る、音声メディア「Voicy」。3カ月で利用者数が2.5倍になるなど、コロナ禍で驚異的に成長している。しかし、たった1年半前は離職率が67%にのぼり、組織崩壊寸前だったという。そんな中でVoicyに入社し、抜本的な人事改革を行ったという勝村氏。一体どのような改革を行ったのか──?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.