小田急、絵がうますぎる駅員さん 駅構内のチョークアートに反響 なぜ始めた?:創意工夫が秘める可能性(2/2 ページ)
小田急電鉄の相模大野駅(相模原市南区)に展示されているチョークアートに、多くの人が足を止めて見入っている。四季の風景や、定期運行を終えた特急ロマンスカーなど、精巧な筆致に反響が広がっている。駅係員たちのアイデアから生まれたアート展示は、どんな経緯から始まったのか。
絵のテーマは毎回、季節に合わせた風景を駅係員たちで話し合って決めている。展示の頻度は不定期で、これまでに8作品(うちチョークアートは4作品)を手掛けてきた。
これまでに特に反響が大きかったのが、神奈川県屈指の紅葉スポット、丹沢大山国定公園にそびえる大山を描いた作品。ホワイトボード一面をモミジやイチョウのカラフルな色彩で埋め、疫病封じの伝説が伝わる妖怪「アマビエ」も登場させて「コロナに負けるな」との願いを込めた。
「展示終了後には『次はいつやるのですか。ぜひまた絵が見たいです』との声を多くいただきました」と作品を描いた駅係員はコメントする。
駅ナカに呼び戻した笑顔
小田急電鉄によると、相模大野駅の1日平均乗降人員は8万7835人(2020年度)。新型コロナウイルス感染拡大を受け、前年の12万7169人から30.9%減となり、他の駅同様にコロナ禍の影響を大きく受けている。
コロナ禍で客足が減り、利用客の気持ちもふさがる中で、何か明るい話題を提供できないかーー。そんな思いから始まったのが駅係員の手作りによるチョークアートだった。
展示を始めてから、駅係員たちは構内の様子の変化に気づいたという。
それまでは、乗り換えなどで足早に改札やコンコースを通過していた利用者が足を止めて作品を眺めたり、子どもを連れた利用者が絵と一緒に写真撮影したりする光景をよく見かけるようになったという。「われわれ駅係員もとても心が和んでいます」と担当者はコメントする。
今となっては、知る人ぞ知るアートスポットとして、次の作品を心待ちにする人も大勢いる相模大野駅のチョークアート。コロナ禍で客足が減った駅構内に、人々の笑顔を呼び戻した駅係員たちの創意工夫は、何でもない駅ナカ通路を、人が集まる観光スポットに変身させる可能性さえ秘めている。
関連記事
- 新幹線から富士山見やすく――JR東海、車内スペースを改良 狙いは?
JR東海は東海道新幹線の最新車両「N700S」を2023〜26年度にかけて、追加で19編成投入すると発表した。追加投入にあたり、車内スペースを一部改良。多目的室の窓の高さを変更し、車いす利用者がより景色を楽しめるようにする。改良の狙いを担当者に聞いた。 - 刺身に電気を流して「アニサキス」撲滅 苦節30年、社長の執念が実った開発秘話
魚介類にひそむ寄生虫「アニサキス」による食中毒被害が増えている。この食中毒を防ぐため、創業以来30年以上に渡り、アニサキスと戦い続けてきた水産加工会社がある。昨年6月、切り身に電気を瞬間的に流してアニサキスを殺虫する画期的な装置を開発した。開発秘話を社長に聞いた。 - 使いやすさより可愛さ! 台湾で立体型の交通系ICカードが大ヒットするワケ
改札機にかざすだけで列車に乗れ、店舗での買い物にも使える交通系ICカード。カードだから当然、フラットな形をしているが、お隣の台湾では少し事情が違う。フラットではなく、キャラクターなどをあしらった立体型のカードが主流だ。日本でいま話題のヤクルトや、森永のミルクキャラメルの箱を模したものなど、企業とコラボしたユニークなアイテムがそろう。いったい、なぜ作ったのか。そこには、日本企業にも参考になる、常識を覆すものづくりのアイデアと、確たる販売戦略があった。 - 「イケアのサメ」に「ニトリのネコ」家具大手ぬいぐるみ なぜ人気?
「イケアのサメ」に「ニトリのネコ」――。大手家具メーカーの”看板商品”とも言えるぬいぐるみの人気のわけを探る。 - 味の素“シンプルすぎる”レシピ 10年前に開発したメニューがいま大人気の訳
味の素が開発したレシピが「シンプルすぎる」と大きな話題を呼んでいる。豚ひき肉のかたまりをマヨネーズで味付けし、そのまま焼くだけ――。Webサイトにアクセスが集中し、一時パンクするほどの注目を集めたレシピは、2010年に開発したもの。なぜいま、反響を呼んでいるのか。開発した経緯などを担当者に聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.