店内に「植林」したアウトドア店の狙いは? オンラインでは味わえない“イマドキ”リアル店舗の魅力:磯部孝のアパレル最前線(4/4 ページ)
今年のゴールデンウイークは、行動制限がかからない大型連休として、近隣の観光地や百貨店などレジャー・消費ともおおむね活況に終わった。アフターコロナを見据え、リアルならではの魅力を発信する店舗の様子を取材した。
「体感型」ではなく「人」を中心に捉えた企業姿勢
現在のリアル店舗の在り方という視点からみて、今回紹介した2店舗に通じた点は、店舗に出向かないと体感出来ない空間や商品の質感があるといったところ。それは単に「体感型」と区分されるような感覚ではなく、「人」を中心に捉えた企業姿勢に通ずるものな気がする。
UPIは、6月に北海道足寄(あしょろ)町に「UPIオンネトー」をオープン。あしょろ観光協会運営の野営場に隣接する形で、物販以外に野営場の受付、観光案内、シャワー設備、軽飲食の提供、アウトドア用品のレンタルなどを行い、近隣アウトドア・アクティビティーの活動拠点となっている。
この施設をオープンするきっかけとなったのも、18年にUPIが現地で開催したアウトドア・イベントだ。足寄の町と人とのつながりによって誕生した。
Onは、テニス選手のロジャー・フェデラーをシニアチームのメンバーに迎え、フェデラー選手と開発した商品を展開。ツアー通算歴代最多111勝を記録し、史上最強のテニスプレイヤーとの呼び声を高いフェデラー選手は、Onに投資家及びアドバイザーとして参画。そのきっかけもOn商品の愛好がきっかけとなったというのだから、「人」とのつながりを感じる。
約3年間のコロナ禍によってインターネットの便利さや、さらなる進化の可能性を見てきた。現在、コロナは収束し始め、元通りの生活を取り戻しつつある中で、今まで味わえなかった自然との触れ合いや人との直接的なコミュニケーションが感じられる価値観を再認識する――。今、求められているリアル店舗の在り方のひとつといっても良いだろう。
著者プロフィール
磯部孝(いそべ たかし/ファッションビジネス・コンサルタント)
1967年生まれ。1988年広島会計学院卒業後、ベビー製造卸メーカー、国内アパレル会社にて衣料品の企画、生産、営業の実務を経験。
2003年ココベイ株式会社にて、大手流通チェーンや、ブランド、商社、大手アパレルメーカー向けにコンサルティングを手掛ける。
2009年上海進出を機に上海ココベイの業務と兼任、国内外に業務を広げた。(上海ココベイは現在は閉鎖)
2020年ココベイ株式会社の代表取締役社長に就任。現在は、講談社のWebマガジン『マネー現代』などで特集記事などを執筆。
関連記事
- ドーミーインはビジネスホテルと呼べるのか 業界人を悩ます「くくり」問題
宿泊施設には多様な種別がある。筆者は7年ほど前から“業態のボーダレス化”と指摘してきた。 - ワークマンの靴専門店、業界一強「ABCマート」の牙城を崩せるか
ワークマンは4月1日、スピンアウトさせた新業態「ワークマンシューズ」が、大阪市の商業施設「なんばCITY」オープンした。日本のシューズ市場はエービーシー・マート一強の時代が続いている。その理由とは? - 「住みたい街」常連の恵比寿が転落! 2位の吉祥寺は今後“ジリ貧”? 専門家が指摘する“なるほど”な理由
リクルートが3月に発表した「住みたい街ランキング2022(首都圏版)」。ここ10年近くは横浜、吉祥寺、恵比寿がトップ3を独占していたが、今回の調査では大宮が3位にランクイン。恵比寿が4位に転落したことが話題になった。なぜ、恵比寿は4位に甘んじることになったのか。リクルートSUUMO編集長の池本洋一氏は2つの理由があると指摘する。 - 「プラスチック新法」に対応したらアメニティーが“ごっそり”盗まれた? 対応に右往左往する現場のリアル
4月1日に施行された通称“プラスチック新法”。「ホテルの客室からアメニティーが無くなる!?」といったうわさがまことしやかに広がったが、実際はどうなのだろうか。ほぼ毎日ホテルに宿泊する筆者が現場を調査したところ……。 - ドーミーインのこだわりは「大浴場」だけじゃない 店舗数拡大でも維持する「水風呂」と「朝食」の質
共立メンテナンスが運営するビジネスホテル「ドーミーイン」。大浴場のこだわりにとどまらず独自サービスを展開している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.