「まぢピンチ」「それな」……京都市交通局、ゆるふわキャラで財政難を“見える化” 狙いを聞いた:強い危機感の裏返し(1/2 ページ)
京都市交通局は、運営する市バス・地下鉄の厳しい経営状況を、漫画を用いて視覚的に「見える化」する取り組みを始めた。新型コロナウイルスの流行を受けて利用客が大幅に減少しており、市は「事業の存続さえ危ぶまれる状況にある」と危機感を強めている。
京都市交通局は、運営する市バス・地下鉄の厳しい経営状況を、漫画を用いて視覚的に「見える化」する取り組みを始めた。新型コロナウイルスの流行を受けて利用客が大幅に減少しており、市は「事業の存続さえ危ぶまれる状況にある」と危機感を強める。従来の情報発信を見直し、市営交通が置かれた状況を利用者や観光客にしっかり伝えようと、新たな発信スタイルに乗り出した。
「まぢピンチ」「それな」――。
6月15日に市交通局の公式Webサイトに公開された、経営状況に関する「見える化」の特設ページ。ページ入口には、“ゆるふわ”なキャラクターのイラストが描かれ、ひときわ目を引く。一歩ページ内に入ると、キャラクターの愛らしさとは一転、「市バスのお客さま数、25.1%減」などといった衝撃的な経営レポートが報告されている。
イラストに描かれているのは、市バスと地下鉄の利用促進を目的としたPRプロジェクト「地下鉄に乗るっ」のキャラクターたち。2011年に市職員の家族がデザインした。今回、元のキャラクターを頭身が低い「ちびキャラ」にアレンジして描いている。「興味を引くため、なるべく緩い切り口でデザインすることを心掛けました」と担当者は話す。
市交通局はこれまで、「地下鉄に乗るっ」のキャラクターを活用したアニメCMの作成やグッズ販売を行い、市バスと地下鉄の増客を狙ったさまざまな取り組みを展開してきた。
過去にない大幅な減収
今回は、そんなキャラクターたちに、市営交通の厳しい現状を語らせるという異例のスタイル。一見、行政の発信に似つかわしくない、ちびキャラを使った発信を始めた背景にあるのは、経営状況に対する強い危機感だ。
市交通局によると、21年度の利用客はコロナ禍前の19年度と比較し、市バスが25.1%減少、地下鉄が26.2%減少。20〜21年度の2年間で運賃収入は約270億円の大幅な減収となり、過去に経験したことのない事態となっている。
この難局を乗り越えるため、市交通局は今年3月、市バス・地下鉄事業の「経営ビジョン改訂版」を策定した。
この中で「情報発信の強化」を掲げ、「多様な広報手段を活用し、視覚的にも分かりやすい情報を定期的に発信するなどにより、経営状況の見える化をさらに推進します」と記した。多様な広報手段とは、TwitterなどのSNSを使った発信や、市バス車内などへの交通局ニュースの掲出などを指す。ちびキャラを使った今回のイラストも、その一環となる取り組みだという。
「現状の危機を打破するために、情報発信ひとつにしても考え方を変えようというのがわれわれの意識。漫画はあくまで切り口のひとつにすぎませんが、事業の状況をより理解してもらうところから全ては始まると考えています」と担当者は説明する。
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