リアの羽からディフューザー、ストレーキ……クルマのエアロパーツは本当に効果があるのか?:高根英幸 「クルマのミライ」(3/4 ページ)
エアロパーツと聞くと、自動車メーカーが販売しているオリジナルのボディに追加するアフターマーケットのドレスアップパーツをイメージする人も多いのではないだろうか。見た目のスピード感やスポーティさ、豪華さを演出するという意味では、クルマ業界のビジネスとしてなかなかのウエイトを占めているようにも見受けられる。果たしてエアロパーツとは、クルマにとってどんな意味を持つものなのか、考えてみたい。
リアの羽からディフューザー、ストレーキ……
エアロパーツには、さまざまな目的が存在する。競技に使われるホモロゲーションモデルには規則上ノーマル形状に限定されることも多く、効果的なエアロパーツが与えられることも珍しくない。
R32型日産スカイラインGT-Rのリアウイングや、メルセデス・ベンツの190E2.5−16VエボリューションIIなどの派手なエアロパーツは、そのままレースで使えるための武器だったのだ。
スバル・インプレッサWRXや三菱ランサー・エボリューションのバンパーやリアウイングは、WRC(世界ラリー選手権)を戦うための武器の1つだった。さらにランサーエボリューションVIIからルーフ後端に追加されたボルテックスジェネレーターも、高速で大きな乱流を防いでウイングの効果を高めてくれる空力パーツであった。
ボディ上面でダウンフォースを増やすには空気抵抗の増大が避けられないことから、次にボディ底面を流れる空気を利用することになる。そこで活用されるのがリアディフューザーだ。これはベンチュリー効果によってダウンフォースを高めるためにリアのボトムに装備されるエアロパーツとなる。
具体的にはリアアクスルまで流れてきた空気をリアエンドに向って開放してやることで圧力を下げ、ボディを路面に吸い付けようとするように働くものだ。筆者の記憶では、本格的なリアディフューザーが市販車で採用されたのは、日産のR34型スカイラインGT-Rニスモだったと思う。トランクのフロアに追加する、CFRP製のその大きなパネルの端正な造形美に、日本のモノづくりのクオリティの高さを感じさせたものだ。
乗用車では、キャビンの凹凸によって横断面ではボディ上面が弓なりにカーブする翼断面形状になることが避けられない。そのため高速域ではリフトフォースが発生してしまうのだ。件のアウディTTは極端な例だが、これは市販車にはほぼ共通の課題ともいえる。このボトムの空力対策は、市販車の世界でも比較的早くから導入されている。
85年に発売されたメルセデス・ベンツ190E(W201)のリアサスペンションのロアアームには樹脂製のカバーが装着され、表面を滑らかにするよう工夫されていた。2002年に発売された3代目の日産マーチ(K12型)では、リアのホイールハウス底部の前にストレーキと呼ばれる整流板を設けることでタイヤ回りの空気抵抗を軽減した。
このストレーキ、フロントにも備えることでバンパーボトムの低さを抑えながら、タイヤ前方の高い圧力(つまり空気抵抗の大きい領域)を逃がして空気抵抗を軽減することにも使われるようになった。
03年に登場したフォルクスワーゲンゴルフの5代目、それもホットハッチのGTIではフロアパネルの下側にディンプル(丸い窪み)を並べた樹脂パネルを貼ることで表面の抵抗を減らし、空気抵抗を減らそうという試みが見られた。
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