リアの羽からディフューザー、ストレーキ……クルマのエアロパーツは本当に効果があるのか?:高根英幸 「クルマのミライ」(4/4 ページ)
エアロパーツと聞くと、自動車メーカーが販売しているオリジナルのボディに追加するアフターマーケットのドレスアップパーツをイメージする人も多いのではないだろうか。見た目のスピード感やスポーティさ、豪華さを演出するという意味では、クルマ業界のビジネスとしてなかなかのウエイトを占めているようにも見受けられる。果たしてエアロパーツとは、クルマにとってどんな意味を持つものなのか、考えてみたい。
これからのエアロパーツはどうなっていくか
近年の市販車は、とにかく燃費を向上させることが最優先されている。もちろん保安基準に適合させるために衝突安全性や排気ガスの浄化、ADAS(先進運転支援システム)の充実など、ほかにも要求される要素は膨れ上がっている。
空気抵抗の低減は、極低速域を除いたほとんどの速度域で走行抵抗を軽減し、燃費をはじめとする環境性能と走行性能を向上させる非常に有効な手段であることは、これまでの流れで理解してもらえただろう。
さらに風切り音の低減は、車内の静粛性を高めて、電動車両の持つ静粛性の高さをより引き立たせるものとなる。
昨今のミニバンブーム、SUVブームもあって、これらのクルマにもエアロパーツが用意されているが、それらはほとんどがドレスアップのためのアイテムであり、機能パーツとしての空力パーツは、すでにさり気なく取り入れられている。つまり気付かないほど控えめでさり気ないモノが、クルマの空力性能を改善しているのだ。
例えばエアロスタビライジングフィンと呼ばれる小さな突起を、トヨタが使い始めたのは、2011年頃からのことだ。この呼称はトヨタの商標であり、実際の効果と構造は、件のランエボに装着されたボルテックスジェネレーターそのものだ。
これはクルマからかい離していく空気の流れによる乱流を、小さな突起による鋭い竜巻状の渦で打ち消してしまおうというもので、86のようなスポーツカーだけでなく、ミニバンやSUVのテールランプなどにも組み込まれている。
ハイエースのテールランプにまで採用したのは驚いたが、考えてみれば箱形のワンボックスという空力性能に問題があるクルマにこそ、こうした整流効果のある空力パーツは効果がある。金型を工夫して突起を設けるだけで追加できるこのフィンは、さらに多くの車種に採用が広がっていくのではないだろうか。
実際には、ボディのあらゆる部分で空気抵抗の軽減が図られている。そんなボディにエアロパーツを追加するのは、開発者から見れば愚の骨頂なのかもしれないが、クルマを購入したオーナーにとっては、自分らしさを演出することで得られる満足感は、燃費を上回るものがある。
つまりEVばかりになっても、クルマに対して空力パーツは必要だし、パーソナライズされるクルマである限り、エアロパーツなどのアクセサリーも無くならないだろう、というのが筆者が想像するミライである。
筆者プロフィール:高根英幸
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmediaビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。近著に「ロードバイクの素材と構造の進化(グランプリ出版刊)、「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。企業向けやシニア向けのドライバー研修事業を行う「ショーファーデプト」でチーフインストラクターも務める。
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