LGBTQの人は「当社にはいない」は通用しない 人事担当が知っておくべき基礎知識:弁護士・佐藤みのり「レッドカードなハラスメント」(2/2 ページ)
性的少数者の割合は約3〜10%。どの職場にもいる可能性があり、「LGBT? 当社にはいないよ」といったスタンスは通用しません。LGBTの人に対するどんな言動がハラスメントに当たるのか学び、職場の対応に関して行政ではどんな動きがあるのかも知っておきましょう。
そしてQ(クエスチョニング)とは、自分の性の在り方が特定の枠に当てはまらない人、分からない人などのことをいいます。例えば、自分は男性と女性の真ん中あたりにいると感じている人や、男性か女性か決めたくない人、男女どちらに対しても恋愛感情を抱かない人……など、性的少数者にはさまざまな人がいます。
SOGIは、全ての性的指向と性自認を含む言葉であり、厳密には、多数派である異性愛者や身体と心の性が一致している者も含みます。そのため、誰もがそれぞれのセクシュアリティを持っているという考え方に基づいた言葉といえます。
最近は、「セクハラ」「パワハラ」などと同じように、「SOGIハラ(ソジハラ、ソギハラ)」という言葉も出てきています。「男らしくない」「女らしくない」などとからかったり、うわさしたりすること、「あの人、ゲイなんだって」などと本人の了解を得ずに他の人に暴露することなども、性的少数者への差別や偏見であり、ハラスメントの一つとして認識されるようになってきてました。
職場の対応に関する行政の動き
そんな中、性的少数者が働きやすい職場作りに関して、行政も動いています。厚生労働省が示すいわゆる「セクハラ指針」(事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)では、被害者の性的指向や性自認にかかわらず同指針の対象になることが明記されました。
2020年に新設された「パワハラ指針」(事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)では、相手の性的指向や性自認に関する侮辱的な言動を行うことや、性的指向や性自認について本人の了解を得ずに他の労働者に暴露することを、職場におけるパワーハラスメントの例として挙げています。さらに20年5月、厚生労働省は「多様な人材が活躍できる職場環境に関する企業の事例集 〜性的マイノリティに関する取組事例〜」も公表しています。
企業は、こうした情報なども参考にしながら、性的少数者も含めた全ての従業員にとって働きやすい環境を作っていくことが大切です。
著者プロフィール
佐藤みのり 弁護士
慶應義塾大学法学部政治学科卒業(首席)、同大学院法務研究科修了後、2012年司法試験に合格。複数法律事務所で実務経験を積んだ後、2015年佐藤みのり法律事務所を開設。ハラスメント問題、コンプライアンス問題、子どもの人権問題などに積極的に取り組み、弁護士として活動する傍ら、大学や大学院で教鞭をとり(慶應義塾大学大学院法務研究科助教、デジタルハリウッド大学非常勤講師)、ニュース番組の取材協力や法律コラム・本の執筆など、幅広く活動。ハラスメントや内部通報制度など、企業向け講演会、研修会の講師も務める。
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