LGBTQの人は「当社にはいない」は通用しない 人事担当が知っておくべき基礎知識:弁護士・佐藤みのり「レッドカードなハラスメント」(1/2 ページ)
性的少数者の割合は約3〜10%。どの職場にもいる可能性があり、「LGBT? 当社にはいないよ」といったスタンスは通用しません。LGBTの人に対するどんな言動がハラスメントに当たるのか学び、職場の対応に関して行政ではどんな動きがあるのかも知っておきましょう。
連載:弁護士・佐藤みのり「レッドカードなハラスメント」:
ハラスメント問題やコンプライアンス問題に詳しい弁護士・佐藤みのり先生が、ハラスメントの違法性や企業が取るべき対応について解説します。ハラスメントを「したくない上司」「させたくない人事」必読の連載です。
6月は「プライド月間」と呼ばれ、世界各地で性的少数者の権利を啓発するイベントやパレードが実施されます。日本の企業も、「LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)」の象徴であるレインボーカラーを使った商品やサービスを展開するなど、プライド月間は性の多様性について考える機会となっています。
そこで、今回は、性的少数者にかかわるハラスメント問題について考えていきたいと思います。
性的少数者の割合は約3〜10% どの職場にもいる可能性はある
LGBTという言葉が広まって久しいですが、最近では、LGBTに「Q(クエスチョニング)」を加え、「LGBTQ」との表現も一般的になってきています。また、「Sexual Orientation(性的指向)」と「Gender Identity(性自認)」の頭文字をとって「SOGI」と表現されることもあります。
こういった言葉で表現される性的少数者ですが、日本にどのくらいいるのでしょうか。電通ダイバーシティ・ラボの行った「LGBT調査2018」の結果によれば、LGBTに該当する人は約8.9%と示されています。調査機関や調査方法によってばらつきがありますが、約3〜10%ほどの割合といわれており、どの職場にも性的少数者がいる可能性があります。
しかし、社会全体として、性的少数者に対する理解は決して十分とはいえず、職場においても、知らず知らずのうちに性的少数者を傷つける言動がなされることがあります。また、性的少数者であることを告白された従業員と性的少数者との間で、人間関係上のトラブルが生じることもあります。
他にも、制服やトイレの使用など、性的少数者に対してどのように配慮すればよいのか、会社が迷う場面もあるでしょう。こうしたさまざまな場面で、性的少数者に対するハラスメントが潜んでおり、会社が対応を誤ると、裁判に発展し、法的責任が生じる可能性もあります。
「Q」「SOGI」とは? LGBTだけではない
性的少数者に対する理解不足からハラスメント問題を引き起こさないためには、まず基礎知識の確認から始めることが大切です。その上で、性的少数者をめぐるいくつかの裁判例を紹介しながら、会社がトラブルをどう防ぎ、どう解決していけばよいのか、また、性的少数者を含めた全ての従業員にとって働きやすい環境をどのように整えていけばよいのか、考えていきたいと思います。
冒頭でLGBTQやSOGIという言葉をご紹介しましたが、この言葉からも分かるように、性的少数者にはさまざまな人がおり、性の在り方はグラデーション状に広がっています。
性的指向
性的指向とは、どのような性別の人を好きになるかということです。L(レズビアン)は心の性が女性で恋愛対象も女性であり、G(ゲイ)は心の性が男性で恋愛対象も男性であり、B(バイセクシャル)は女性も男性も恋愛対象である人をいいます。
どのような性別の人を好きになるかというのは、本人が選択できるものではありません。また現在では「同性愛は病気ではない」ことが確認されています。
性自認
性自認とは、自分の性をどのように認識しているかということ、つまり、心の性のことです。T(トランスジェンダー)は身体の性と心の性が一致せず、身体の性に違和感を持つ人のことです。トランスジェンダーが抱える違和感の程度はさまざまであり、どのように対処するかも個人によって異なります。
全てのトランスジェンダーが身体の性を心の性に合わせるための手術を希望するわけではありませんし、戸籍上の性別の変更を望むわけでもありません。そのため、職場においても、従業員個人の抱える悩みや希望を尊重して、柔軟に対応することが大切になります。
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