「ない」ことがたくさんある結婚式場が、なぜクチコミサイトで「1位」なのか:水曜日に「へえ」な話(3/5 ページ)
「IWAI OMOTESANDO」という結婚式場をご存じだろうか。2019年にオープンしたところ、利用者からの評判がよく、クチコミサイトで1位に。歴史もなく、知名度も低く、利用者も少ない式場なのに、なぜ人気を集めているのだろうか。
「高砂席」がない
さて、前置きが長くなってしまったが、イワイの話をしよう。クチコミサイトで1位ということは、その理由は現場にあるはずである。豪華シャンデリアがぶら下がっていたり、教会のバージンロードがめちゃくちゃ長かったり、キラキラした装飾がまぶしかったり。そんな姿を想像していたわけだが、違ったのである。派手な演出はしていないし、卓上のお花もないし、新郎新婦が座る高砂席もない。
「はあ? 高砂の席がないだと? じゃあ、2人はどこに座るんだよ」と感じられたかもしれないが、ゲストの隣である。長いテーブルがあって、そこにゲストが着席する。その中に、紛れ込むような形で座っているのだ。ウェディングドレスを着ていれば「新婦はあの人ね」といった感じですぐに分かるが、問題は新郎である。地味なタキシードをまとっていれば、「むむ、どこにいるの? 新婦の隣に座っている人が……たぶん新郎だよね」といった感じで、“ウォーリーをさがせ!”状態になることも。
このほかにも、「ない」ものがたくさんある。結婚式の定番ともいえるケーキの入刀もなければ、大きなメロディーとともに入場するシーンもなければ、ロウソクの点灯もない。従来の結婚式とはかなり違うわけだが、なぜいまの形の運営を始めたのだろうか。同社で執行役員を務めている吉田勇佑さんに聞いたところ、「リアルの声に耳を傾けた結果、ゲスト体験をゼロベースで再構築したところ、このような形になりました」という。どういう意味か。
先ほど紹介したように、クレイジーはオーダーメイドウェディング事業から始めた。新郎新婦の依頼を受けて結婚式を手掛けてきたわけだが、その写真を見ると、「あれ、あれれれ」と感じたのだ。花はたくさん飾られているし、新郎新婦は高砂席に座っているし、全体的にキラキラしているし(もちろん、すべてではない)。いまやっていることと真逆のスタイルではないか。
「時代の空気を読んで、オーダーメイドウェディングを始めたわけですが、やがて『あれ?』『うーん』と思うことが多くなってきまして。結婚式をあげないカップルが増えていく中で、何か見落としていることがあるのではないかと考えました。本音を探っていけば、その答えが見つかるのではないかということで、たくさんの声を集めることにしました」(吉田さん)
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