LGBTの社員への対応 会社が責任を問われるリスクがあるのはどんなケース?:弁護士・佐藤みのり「レッドカードなハラスメント」(1/2 ページ)
LGBTなどの言葉が比較的広まってはきたものの、性的少数者の従業員への対応に、万全を期しているという企業はいまだ少ないでしょう。対応によっては、企業側が安全配慮義務違反などに問われることもあり得ます。
連載:弁護士・佐藤みのり「レッドカードなハラスメント」:
ハラスメント問題やコンプライアンス問題に詳しい弁護士・佐藤みのり先生が、ハラスメントの違法性や企業が取るべき対応について解説します。ハラスメントを「したくない上司」「させたくない人事」必読の連載です。
LGBTなどの言葉が比較的広まってはきたものの、性的少数者の従業員への対応に、万全を期しているという企業はいまだ少ないでしょう。対応によっては、企業側が安全配慮義務違反などに問われることもあり得ます。
性的少数者であるために不利益な取り扱いをしないことはもちろんですが、職場における同僚などとの関係において問題が発生した場合、安全配慮義務違反などに問われる可能性もあります。こうしたリスクを把握し、対応を検討することが必要です。
企業が対応を誤れば訴訟に発展しかねないポイントとは、どのようなものでしょうか。2つの裁判例をご紹介します。
社内でのトラブルの末、自殺してしまったケース
トランスジェンダーの職場内での恋愛がハラスメント問題に発展した事例をご紹介します(広島高裁2011年6月23日判決)。
職場では女性として振る舞っていたAですが、心は男性であると感じながら、長年葛藤を抱えていました。Aは、同じ部署で働く先輩の女性B子に恋愛感情を抱くようになり、B子に対し自身のリストカットの傷跡を見せながら、恋愛感情を告白しました。B子は、トイレに行く際、Aからつきまとわれていると感じていたこともあり、Aに対し強い恐怖心や不安感を覚え、それは無理であると答えました。
B子は長年勤めた会社を退職してでもAとの関係を断とうと思い詰めました。部長も交えた話し合いの席でB子は「Aさんがいる限り、精神的に参っているので仕事をするのは無理です。退職します」などと告げました。話し合う中で、AはB子が退職するのはよくないので、自分が辞めると述べました。
Aの自己都合退職の手続きの途中で、Aは退職を撤回するに至り、会社は、職場でのリストカット行為やその傷を意図的に他の従業員に見せたことなどを理由に、Aを解雇しました。
これに対してAは復職を求め裁判を起こしました。裁判は、「Aを違う部署で復職させる」という和解の方向で進んでいたところ、Aは自殺しました。
会社の責任は?
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