au通信障害で起きた“負のスパイラル” 「おかけになった番号は現在……」に至るまで:本田雅一の時事想々(2/5 ページ)
7月2日、auで大規模な通信障害が発生した。KDDI高橋誠社長ら記者会見で語った経緯や調査状況から分かることとは? ITジャーナリストの本田雅一氏が解説する。
トラブルは多摩から全国へ 通信が極端に集中する“輻輳”状態に
トラブルはまず、東京・多摩にあるKDDIのネットワークセンターで起きた。
KDDIのネットワークでは、全ての音声通話はデータ通信へと変換される。この技術は「VoLTE」というもので、音声通信の仕組みを「VoLTE交換機」がデータ通信へと変換し、外部の音声通信網と接続したり、KDDIネットワーク内の端末呼び出しなどを行う。
先日、3Gネットワークが停波されたため、全ての端末はこの仕組みだ。
“交換機”と表現しているが、実際にはコンピュータであり、“サーバ”と呼ぶ方が多くの人が抱くイメージに合うだろう。ではVoLTE交換機がトラブルを起こしたのかといえばそうではない。
多摩のネットワークセンターに設置されているルーターを、定期的なシステムメンテの一環として交換したところVoLTE交換機上で異常を示す警告が出た。
この警告が出た15分後、音声通話要求がVoLTE交換機に届いていないことが判明。即座にシステムの切り戻しを実施したという。切り戻しとは、英語でいうところのフェイルバック。つまり新しい機材へと更新して異常が起きたので、正常に動いてたシステムへと戻すことで対処したわけだ。
時間帯が深夜(午前1時35分頃)だから、実際の音声通話は多くはなかっただろう。しかしVoLTE対応の端末、つまりKDDI携帯電話網につながる全音声端末=最大で約3915万回線は、音声通話を発信しなくとも50分に一度はVoLTE交換機に接続しに行くという。
多摩のネットワークセンターには東京を中心とした関東地区の通信処理が集まるが、15分後に切り戻すと、それまでエラーとなってたまりきっていたVoLTE交換機への接続リトライ(再要求)が集中して「輻輳」(ふくそう)が始まり、結果的にトラブルが全国へと広がった。
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