au通信障害で起きた“負のスパイラル” 「おかけになった番号は現在……」に至るまで:本田雅一の時事想々(3/5 ページ)
7月2日、auで大規模な通信障害が発生した。KDDI高橋誠社長ら記者会見で語った経緯や調査状況から分かることとは? ITジャーナリストの本田雅一氏が解説する。
輻輳とは、通信が極端に集中してしまう状態を指す。通信がつながらない、あるいは届いているか分からない場合に、通信内容の破棄と再送信が繰り返し発生する──などのメカニズムで、有効な通信帯域が極端に減ってしまう現象だ。
ちなみにVoLTE交換機は全部で18台あり、負荷を分けあう仕組みが導入されており、当然ながらそれぞれの処理能力は十分に高く設定されている。正常に動作していたシステムに切り戻せば、問題は収束へと向かうはずだった。
ではなぜ輻輳してしまったのか。KDDI自身「まだどのように障害が広がったのか、その機用順序は分析中」というようにトラブルの根っこは不明だ。
高橋社長は昨年起きたドコモのトラブル(5G/LTE回線が12時間にわたってダウン)について「他人ごとではない」と危機感をもって既存システムの再点検を行うと話していた。実際、大規模なシステムダウンが起きないよう対策をしてきたという。
そんな中での大規模障害だけに「実際に障害が起きている。言い訳できない(高橋社長)」というが、そこにはまだ明らかになっていない、つまりKDDIも結論へとたどり着けていない理由があるのだろう。分析はまだこれからだ。
VoLTE交換機の輻輳から、別のトラブルへ
VoLTE交換機への接続要求が15分遮断、それも全国一様にではなく、一部のネットワークセンターだけの話だ。15分の間にたまった端末からのリトライが集中したとはいえ、そんなに簡単に輻輳するようなことがあるのか? と疑問に感じる読者もいるかもしれない。
当然、われわれが考えているようなトラブルの原因はKDDIも考えており、何らかの対策は打っていたはずだ。しかし接続している端末の振る舞いの全てまで、把握できていない可能性はあるだろう。
今回のようなトラブルケースで輻輳した原因には、端末側の実装も関係しているかもしれない。いずれにしろ、記者会見時点ではまだトラブルの収束を図っていた段階だ。
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