楽天モバイルの新料金プランがスタート 0円廃止で今後はどこに向かうのか:プライシングのプロが解説(3/4 ページ)
楽天モバイルが新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」を5月13日に発表しました。この状況に対しインターネット上では批判の声も続出していますが、プライシングの専門家である筆者には、批判を覚悟したうえでの楽天の強い意思と思惑が感じ取れます。
楽天モバイルは今後どうしていく?
今後も楽天モバイルの値上げは続くのでしょうか。筆者は、小さい値上げはあるかもしれないものの、今回のような大きな価格変更はしばらくは行われないと考えます。
このグラフは、筆者の独自調査ならびに試算に基づいて、楽天モバイルのプラン価格ごとの購入許容度を表示したものです。横軸に「価格」、縦軸に「高すぎて検討に乗らない購入者の割合(潜在層含む)」を示しています。
3000円、4000円、5000円に10%以上顧客が離脱する大きな壁があることが分かります。
楽天モバイルの21年12月末時点でのMVNOを除く契約数は450万、MVNOを含めた契約数は537万。今年2月には双方を合わせた契約数が550万を突破するなど、現在に至るまで順調に契約数を伸ばしてきました。また三木谷氏は、将来的な契約数について「1500万、2000万はいくと確信している」と発言しています。つまり、まだまだ顧客数を伸ばしたい事業フェーズであり、このタイミングで4000円、5000円の壁を超えてまで単価を上げる施策を打ち出すとは考えにくいでしょう。
今後は現在の単価帯を維持しつつ顧客数を増加させ、グループサービスとの連携をさらに強化し、(現在もそうなりつつありますが)高付加価値で低価格のポジショニングを築いていくでしょう。
一般的に、携帯キャリアが参入障壁を築くためには、人口カバー率とグループサービスとのシナジーが大事とされています。楽天はすでに楽天カードや楽天市場などの独自の経済圏を築いているため、鍵になるのは人口カバー率です。
つまり、楽天モバイルの人口カバー率が今後さらに増加すると、楽天モバイルは「高付加価値で低価格」のポジショニングが確立されます。そうなるとドコモやKDDI、ソフトバンクから顧客がどんどん流れてくると楽天モバイル側は見ているのではないでしょうか。
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