「全員70歳まで雇用は難しい」──改正高齢法から1年、明らかになる企業のホンネ:改正高齢法の実情は(2/4 ページ)
70歳までの就業機会の確保を努力義務とする改正高年齢者雇用安定法(高齢法)が2021年4月に施行されて1年が経過した。企業の対応の現状や、担当者が抱えるホンネとは? 人事ジャーナリストの溝上憲文氏が解説する。
「努力義務」を理由に、検討は進まず
実際に経団連が20年8〜9月に調査した70歳までの就業確保措置の取り組み状況によると、具体的な対応を決定済と答えた企業はわずかに9.1%。「対応について検討中」が43.3%、「まだ検討していない」が43.3%となっていた(「2020年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」21年1月19日)。
本格的に検討が進んだのは21年4月の法律の施行以降だ。経団連が21年9〜11月に実施した同じ調査によると、「対応済」が21.5%、「対応を検討中」29.5%、「検討予定」38.6%、「検討していない」10.4%となっている。前年に比べて対応済企業が増加し、検討中・検討予定も増えているが、法律が施行されても「対応済」が少ないのは「努力義務だから」が大きな理由だ。できれば70歳まで雇用したくないという企業の思いが透けて見えるようだ。
「対応済」「検討中」の企業の具体的な措置内容(複数回答)では「定年引上げ」「定年廃止」は3%前後と低いが、「継続雇用制度の導入(自社・グループ)」が94.3%と最も多くなっている。
新たに設けられた選択肢では「他社での継続雇用制度の導入」が11.4%、創業支援措置の「業務委託契約を締結する制度」が18.7%。非雇用の業務委託契約を選択肢とする企業も少なくない。
社会貢献事業では「事業主自らが実施する社会貢献事業に従事できる制度」が3.6%、「事業主が委託、出資する団体が実施する社会貢献事業に従事できる制度」は4.7%と、いずれも低率にとどまっている。
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