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「全員70歳まで雇用は難しい」──改正高齢法から1年、明らかになる企業のホンネ改正高齢法の実情は(3/4 ページ)

70歳までの就業機会の確保を努力義務とする改正高年齢者雇用安定法(高齢法)が2021年4月に施行されて1年が経過した。企業の対応の現状や、担当者が抱えるホンネとは? 人事ジャーナリストの溝上憲文氏が解説する。

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「継続雇用制度の導入」の落し穴 雇ってもらえない人も

 上述のように、圧倒的に多いのがこれまでの65歳までの雇用と同じ再雇用などの継続雇用だ。といっても、希望すれば誰もが雇ってもらえるわけではない。

 今回の就業確保措置は継続雇用を含めて希望者全員を対象にする必要はなく、対象者を限定する基準を設けることができる。経団連の調査によると、対象者基準を設ける企業は「継続雇用制度(自社・グループ)」で83.8%、「他社での継続雇用制度」が66.7%、「業務委託契約を締結する制度」が84.6%。継続雇用や非雇用の業務委託であっても何らかの対象者基準を設けて選別する企業が多い。

 対象者基準は、例えば「過去〇年間の人事考課が〇以上」「過去〇年間の出勤率が〇%以上」といった人事評価など具体的基準を設定できる。しかも選別期間は60歳時点から始まっている企業も少なくない。例えば凸版印刷は「専門性や成果を60歳から査定し、働きに応じて6割程度が再雇用対象となると想定している」と報じられている(『日本経済新聞』6月27日朝刊)。

 その他に60歳時点で社員を再評価し、ランクごとに職務を付与し、それに見合った給与を設定し、65歳までの働きぶりを見て70歳まで雇用するかどうかを決める企業もある。


画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ

「全員を雇える余裕はない」「ぶら下がり意識が強い社員も」

 なぜ基準を設けて選別しようとしているのか。1つの理由は人件費コストの増加だ。

 サービス業の人事部長は「コロナ禍で業績不振が続き、70歳まで継続雇用するにしても65歳以降の賃金は下げざるを得ない。一方、現役世代についてもすでに脱年功制に向けた見直しに着手しており、人件費全体の適正化に取り組んでおり、70歳まで全員を雇える余裕はない」と話す。

 もう1つの理由は高齢社員の仕事に対する意欲だ。一般社団法人定年後研究所が大手企業26社の企業人事担当者に実施したヒアリング調査(2021年10月)によると「まずは定年を65歳に延長することを検討しているが、他律的でぶら下がり意識が強い社員も存在しているので、現在のまま、単純に70歳まで希望者全員を雇用延長することは難しい」との声もある。

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