コラム
トランスジェンダーは「勤務フロアから2階以上離れたトイレ」の使用のみ認める──違法ではないのか:弁護士・佐藤みのり「レッドカードなハラスメント」(1/3 ページ)
身体と戸籍上の性は男性、心の性は女性のトランスジェンダーE。女性として日常生活を送っていましたが、職場では「勤務フロアから2階以上離れた女性トイレ」の使用しか認められていませんでした。こちらが違法ではないかと争われた判例をご紹介します。
連載:弁護士・佐藤みのり「レッドカードなハラスメント」:
ハラスメント問題やコンプライアンス問題に詳しい弁護士・佐藤みのり先生が、ハラスメントの違法性や企業が取るべき対応について解説します。ハラスメントを「したくない上司」「させたくない人事」必読の連載です。
性的少数者に関するハラスメント問題は、人間関係を巡るものばかりではありません。トイレや制服など、男女で分かれているものについて、職場がどのように配慮していくべきか、裁判で争われることもあります。
トイレの使用を巡って争われた事例をご紹介します(一審:東京地裁2019年12月12日判決、二審:東京高裁21年5月27日判決)。
Eは、身体と戸籍上の性は男性ですが、心の性は女性のトランスジェンダーです。健康上の理由で性別適合手術は受けていませんでしたが、勤務する経済産業省から、女性の服を着用するなど女性として勤務することを認められ、女性として日常生活を送っていました。しかし、トイレについては、勤務フロアから2階以上離れた女性トイレの使用しか認められず、国に対して慰謝料などを求め、裁判を起こしました。
国側は「Eの身体的性別や戸籍上の性別が男性であることに伴って、女性職員との間でトラブルが生じるおそれがある」と主張しました。
トランスジェンダーのトイレ利用 裁判所の判断は?
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