KDDIの通信障害、政府は「叱る」前に何をすべきか:世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)
最大3915万回線に影響を及ぼしたKDDIの大規模通信障害。KDDIの高橋誠社長が行った会見など対応が話題となったが、筆者は「少しやり過ぎではないか」と感じた。その理由は――。
情報を出しすぎた
米国のインフラに何か事故が起きた場合、ここまで詳細に解説したことはあるのだろうか。少なくとも、筆者は聞いたことがない。安全性を考えると、情報を出しすぎたのかもしれない。そういう意味でも、総務省とKDDIは協力して、日本のインフラを守っていくことも重要なのだ。叱りつけるのではなく、だ。
こうした情報は、経済安全保障にもかかわってくる。2022年5月に成立した経済安全保障推進法には、「基幹インフラの安全性と信頼性の確保」という項目がある。ハッキングなど妨害工作を防ぐことにチカラを入れていくわけだが、そのためにも通信システムの情報を公にするのは止めるべきである。
今回の通信障害を受け、総務省は通信業者の“司令塔的”な役割を担って、トラブルに対してはきちんとシミュレーションを行い、広報活動も積極的に実施して国民の不安解消に乗り出したほうがいい。
生活の基盤を揺さぶるような問題が起きた際、途方に暮れる国民に対して、国がきちんとリーダーシップを持って対応していく必要がある。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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