KDDIの通信障害、政府は「叱る」前に何をすべきか:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
最大3915万回線に影響を及ぼしたKDDIの大規模通信障害。KDDIの高橋誠社長が行った会見など対応が話題となったが、筆者は「少しやり過ぎではないか」と感じた。その理由は――。
総務省は何をやっていたのか
今回、ユーザーに利用制限や段階的な復旧が周知されなかったという問題も指摘されている。そこに、総務省などが関与することもできたのかもしれない。
もちろん、総務省が何もしていないと言っているわけではない。総務省は、全国各地の学校や公園などの公共施設で利用できるフリーWi-Fiの設置を進めてきた。現時点で、全国に少なくとも3万カ所で設置しているという。
そうした取り組みは、今回の通信障害でどれほど利用されたのか、総務省にはぜひ検証してほしい。今回のKDDIに限らず、少し前にはNTTドコモも楽天グループも同じような通信障害を起こしてきているので、今後、また起きない保証はない。
KDDIの会見では、何が起きたのかについて、プレゼン資料を用意して事細かに日本の通信インフラのシステムについて解説した。会見場には、通信分野やテクノロジーを担当している記者たち、特に通信分野や携帯電話に精通したフリーランスの人たちが、テクニカルな質問を続けていた。
技術畑出身の社長が、分かっている範囲で的確に説明することは大事である。会見場にいた記者たちは自分たちの仕事を全うしていたわけだが、技術的な難しい話を理解できる読者はそれほど多くないはずだ。
しかしながら、KDDIのこの説明はいただけない。安全保障の面からも、日本の重要インフラを担う通信会社が、そのシステムを明らかにするのは不安を感じる。今回問題になったVoLTE交換機が日本国内でいくつ使われ、そこにつながるコアルータや利用者データベースがどうなっているのかも図解を示して解説していた。
今後、日本に対して、サイバー攻撃やなんらかの工作を行おうとする脅威国の関係者たちには貴重な情報となるだろう。
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