クルマが壊れる3つの原因 故障のパターンとこれからの自動車社会に起こる変化:高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)
クルマのメンテナンスフリー化が進んでいる。新車から5年はオイル交換のほかは、燃料給油とタイヤの空気圧を管理する程度で走り続けることが可能なくらい、クルマの信頼性が高まっている。けれども機械や電子部品は永久に使い続けられるものではない。
クルマが壊れる原因は大きく分けて3つある
可動する部品が摩耗や金属疲労によって壊れてしまうことは、最も想像しやすい故障のパターンだろう。エンジンや変速機の内部では、さまざまな部品が動いている。潤滑や冷却が施されるものの、長年の使用で徐々に摩耗したり、折れて壊れてしまうことがある。
プラスチック製の部品も熱や紫外線によって脆(もろ)くなり、折れたり割れたりするようになる。金属よりも軽量で低コストな反面、耐久性は金属にはかなわない。ゴムはさらに寿命が短くなる。しかし振動を吸収したり、圧力や荷重に耐えて支たりするゴムの持つ特性は、クルマにとって欠かせないものだ。
サスペンションの可動部にはブッシュやボールジョイントが組み込まれており、走行中の衝撃を受け続ける。10年10万キロ程度は耐えることもあるが、走り方や環境によってはそれ以前に寿命を迎えることもある。ダンパーやスプリング、アッパーマウントだって同様だ。
ブレーキパッドやタイヤなどの消耗品だけが消耗していくのではなく、動く部品はすべて消耗が避けられない。違うのは、どれくらいの期間を想定しているか、ということだけなのだ。
昔はオーバーホールによって、摩耗した部品を取り換え、再び機能を取り戻すことが一般的に行なわれてきたが、最近のクルマはリビルド業者がオーバーホールしたリビルド部品に交換することが一般的で、クルマを預かるディーラーや整備工場がその部品をオーバーホールする作業を行なうことは、ほとんどなくなっている。クルマの構造も自動車業界のシステムも変化しているのだ
2つめは可動する部分はなく、内部の部品が破壊されることで故障するパターンだ。電子部品の破損がこれに相当する。
これは個体差や使い方によっても寿命が大きく変わってくる。例えばエンジンに組み込まれるオルタネータ(交流発電機)は、ローターに発電のために電気を供給するブラシやローター軸受けのボールベアリングなどは機械的な摩耗によって寿命を迎えるが、それだけが故障の原因になるわけではない。
発電した電気の電圧を調整するICレギュレーターなどの半導体部品は、壊れることも多いものの、その寿命は実にまちまちだ。サプライヤーによってはメンテナンスのしやすさからブラシとICレギュレーターを一体構造にして、管理を容易にしているブランドも存在する。
ともあれ半導体を使っている以上、通電のショックにより壊れることもあり、寿命は予測できない。それでも熱や振動が多ければ、壊れやすくなる。クルマには50〜100個ほどのマイコンが使われているが、使用環境としてはかなりの劣悪条件なので、使い方によってクルマの寿命を縮めてしまうこともある。
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