クルマが壊れる3つの原因 故障のパターンとこれからの自動車社会に起こる変化:高根英幸 「クルマのミライ」(3/5 ページ)
クルマのメンテナンスフリー化が進んでいる。新車から5年はオイル交換のほかは、燃料給油とタイヤの空気圧を管理する程度で走り続けることが可能なくらい、クルマの信頼性が高まっている。けれども機械や電子部品は永久に使い続けられるものではない。
最後はドライバーの使い方で壊してしまう、というパターンだ。エンジンオイルの交換は自動車メーカーの推奨するオイルの品質と粘度、交換時期を守っていれば、トラブルを起こすことは通常はほぼない。
だがそれは、エンジンのコンディションを維持する、というより通常考えられる寿命を全うできるという意味で、徐々に消耗していくことは避けられない。しかもシビアコンディションを設定しているメーカーも多く、その場合の交換時期は通常の半分程度の短さとなることが一般的だ。
シビアコンディションという言葉は知っていても、それを年間走行距離が多い、1回の走行で長距離を走る、高速道路を連続走行というような激しい使い方だと思い込んでいる人も多い。ところが例えば渋滞、それも真夏の炎天下ともなれば、エンジンオイルの劣化も進むことになる。これもシビアコンディションの範疇(はんちゅう)に入るだろう。
エンジンの始動と停止を頻繁に行なうような使い方もシビアコンディションに含まれる。エンジンは始動時に少し多めに燃料を噴射するため、それが燃焼室からクランクシャフト側へと吹き抜けて、エンジンオイルに燃料希釈を起こしてしまう。
そして維持費を節約しようとするあまり、エンジンオイルの交換を怠ってしまうと、途端にエンジン内部のコンディションは悪化する。ただでさえ、省資源化のためにエンジンオイルの容量は減らされ、ギリギリまで交換サイクルは引き伸ばされている。
コロナ禍によってクルマを使う機会が増え移動のための出費が増えたことから、オイル交換での出費をためらって、オイル交換を引き延ばしてしまうオーナーもいるようだ。それは確実にエンジンの寿命を加速度的に縮めてしまう。
街で走っているクルマを見ていると、エンジンが異音を発している2、3世代前のミニバンや軽自動車を見かけることも珍しくない。もう古いクルマだから、と調子を崩すのも当然と考えているのか、不調にまったく気付いていないのかは分からないが、クルマが悲鳴をあげているのをみると、いたたまれない気持ちになってくる。
タイヤの空気圧管理を怠ることも、クルマやタイヤ自体の寿命を縮めかねない。
特に最近の低扁平タイヤは、サイドウォールの剛性が高く空気圧による乗り味の変化を感じ取りにくくなっている。そのため、外から見て分かるほど空気圧不足の状態で走っているクルマを見かけることも珍しくない。
そんな状態で走っているとタイヤは路面の凹凸などによる衝撃を十分に吸収することができず、ホイールのリムと地面に挟まれ潰されて、裂けてしまうこともある。事実、JAFのロードサービスでは救援理由のランキングでタイヤのパンク・バーストが常にトップ3に入っている。
高速道路でも、タイヤの空気圧不足はタイヤの変形と圧力と温度上昇を招き、バーストしてしまう可能性が高まる。だからといって多めに空気を充填してしまうと、タイヤのトレッド中央が膨らみ偏摩耗の原因となる。それだけでなく、ウエット走行時のグリップが低下するほか、タイヤ剛性が高まりすぎて足回りへ走行中の衝撃が伝わりやすくなり、乗り心地の悪化やアッパーマウントやハブベアリングなど足回り部品の寿命を縮めてしまう。
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