京急と阪急阪神、人気私鉄の意外な「ビジネスモデル」の違い:支持は共通だが(3/4 ページ)
関東の京急電鉄と関西の阪急電鉄は、ともに人気の私鉄だ。熱心なファンも多いが、それぞれ異なるビジネスモデルを確立している。それは……。
総合産業としての阪急阪神HD
阪急阪神HDは、さまざまな産業によって成り立っている。こちらも、22年3月期の有価証券報告書を見てみよう。その中でも多くの人に愛されている、阪急電鉄のセグメント分析もしてみたい。これは、阪急阪神HD内の有価証券報告書をもとにしている。
阪急阪神HDは、沿線ビジネスを確立した小林一三氏により創業された会社がもとになっており、グループ内でさまざまなビジネスを行っている。一方、阪神電気鉄道とのグループ統合や再編などを経て、阪急電鉄や阪神電気鉄道にルーツを持つ企業グループは、阪急阪神HD、エイチ・ツー・オーリテイリング、東宝の3つのグループに分かれている。阪急阪神HDの有価証券報告書だけで、全体像を把握することは難しいのである。
阪急阪神HDの都市交通事業は、1616億2300万円の収益を上げている。うち、鉄道事業は1185億3900万円、自動車事業(バスやタクシー)は340億9800万円。中でも阪急電鉄の都市交通事業は1229億7600万円となっている。阪急阪神HDの都市交通事業のうち、阪急電鉄の収益力は高いといえる。
阪急阪神HDで見ると、鉄道以外にも不動産や国際輸送での収益が大きい。一方、都市交通事業の従業員はセグメント別で見ると最も多い。
阪急電鉄だけで見るともっと露骨だ。都市交通事業だけで57%の収益を占め、従業員は89%となっている。
阪急阪神HDはたくさんの事業を展開していて、企業の有価証券報告書だけではグループ全体の状況を把握できないほど大きい。阪急電鉄から枝分かれしていったエイチ・ツー・オー リテイリングや東宝も見ないと、巨大企業グループとしては分析できない状況となっている。
都市交通をメインとしつつ、国際輸送や不動産でも収益を上げ、宝塚歌劇団や阪神タイガースでも存在感を見せているのは、阪急阪神HDの実態である。
阪急阪神HDの株主総会の様子は、例年報道される。必ずと言っていいほど、阪神タイガースの成績についての質問が出る。企業グループ全体の中の、一企業のその子会社という位置付けであるものの、阪神タイガースがどうこうという話は必ず出てくる。
だが、阪急阪神HDにとってエンタテインメント事業は収益、従業員ともに大きな割合を占めていない。宝塚歌劇団についての質問があったという報道が少ない一方で、阪神タイガースについての質問ばかり報道されるのも、妙なクローズアップのされ方である。
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