三菱地所が目指す「有楽町改造計画」の全貌 解体予定のビルに生まれた“謎空間”とは:一等地にアーティストの工房?(4/5 ページ)
20年前の東京・大手町、丸の内、有楽町を覚えているだろうか。午後3時にはシャッターが閉まり、週末はほぼ無人になる寂しいオフィス街だった。だが、この20年で街の風景は大きく変わり、道行く人の顔ぶれも多様に。社会の変化を追い風にして次の10年へ。これまでにない街を目指す大丸有の今を聞いた。
街全体をオープンイノベーションの場に
このmicroの境界の曖昧な作り方の根底には、街全体をオープンイノベーションの場にしたいという考えがある。組織内部のイノベーションを促進するために意図的、積極的に内部と外部の技術やアイデアなどといった資源の流出入を活用すべしというオープンイノベーションはいわば越境。境界、壁を無くすことで新しいものを生み出していこうとの考え方である。現在行われている先導プロジェクトは、ハード、ソフトともにどれだけ境界を曖昧にしていくことが許容されるかの実験というわけである。
そこまで聞くと、アーティストが存在する意味が見えて来る。境界がないとまでは言わないが、一般的なビジネスパーソンに比べればアーティストと呼ばれる人たちは境界や常識、ルールから自由だ。
山元氏もプロジェクトを通してアーティストと関わる中で「そういう見方があったか!」という驚きがあり、それがルールを見直すきっかけになったこともあるという。組織の中にいると当たり前で疑いもしないことの問題点を全く思いもしなかった角度から指摘されるのである。アーティストは境界再考、壁の打破にあたっては最強の助っ人だろう。
実際のアートプロジェクトとしては店舗入替期間をアーティストの活動の場として活用する「ソノアイダ#有楽町」、アートの制作過程を街なかで広く公開する4カ月間の実証パイロットプログラム「YAU」などが行われており、今後もビジネスパーソンを対象としたアートスクールを開催するなど、あの手この手でアーティストの力を借りていくという。
「23年度には両ビルの建て替えに着手しますが、計画自体は10年、20年スパン。それまでの間、有楽町の入口となる部分が仮囲いだけの土地にならないよう、その点でもアートの力を借りたいと思っています」(山元氏)
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