三菱地所が目指す「有楽町改造計画」の全貌 解体予定のビルに生まれた“謎空間”とは:一等地にアーティストの工房?(5/5 ページ)
20年前の東京・大手町、丸の内、有楽町を覚えているだろうか。午後3時にはシャッターが閉まり、週末はほぼ無人になる寂しいオフィス街だった。だが、この20年で街の風景は大きく変わり、道行く人の顔ぶれも多様に。社会の変化を追い風にして次の10年へ。これまでにない街を目指す大丸有の今を聞いた。
今ある仕事以上のビジネスを生み出すオフィス街へ
これまでのオフィスが「固定された自席で仕事をする場」で、オフィス街がその集合体だったとすると、今行われている実験はそれを流動化し、これまでオフィス街とは無縁だった人たちまでを巻き込んで新しいアウトプットを生み出そうとするものである。コロナ禍で在宅勤務、リモートワークが進展したことから、これまでのようなオフィスが必要かという議論が出たが、それに対する答えのひとつと言ってもよい。
だが、先導プロジェクトが始まったのはコロナが広がり始めた頃。つまり、コロナ前からこれからのオフィス、オフィス街の未来像は描かれていたということになる。山元氏は「こういう形になるだろうと思った方向に、思っていたよりもはるかに早いスピードで進んでいます。先にスタートしておいてよかったと思っています」と振り返る。
今ある仕事を続けていくだけのオフィス、オフィス街ではなく、今ある仕事以上のビジネスを生み出せるオフィス、オフィス街へ――。考えてみると三菱地所は本来、不動産デベロッパーであり、扱うものは建物、ハードだったはず。だが、これからの時代には今までと同じ形の箱=建物ではなく、異なるものが求められると同時に、箱の中身やその入れ方までが問われるようになっている。
その観点からすると、大丸有のNEXTステージは同社にとっての越境でもあるのかもしれない。そして、それが求められているのは大丸有だけでも同社だけでもないような気がする。
著者プロフィール
中川寛子(なかがわ ひろこ/東京情報堂代表)
住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。路線価図で街歩き主宰。
40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくりその他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
主な著書に「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版社)など。宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。
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