「自分を最底、底、底に置きなさい」他人の評価に惑わされず“病み回避”するための心得:大愚和尚のビジネス説法(1/3 ページ)
インターネット成熟期の今、あらゆる情報の入手、あらゆる人とのつながりは全てオンライン上で完結する時代になった。しかし同時に、現代特有の“病み”がまん延するという現実も忘れてはならず、そこには少なからずインターネット中毒による影響があると分析する研究結果もある。大愚和尚に、SNSにまどわされず「他人の評価」とうまく付き合うコツを聞く。
大愚和尚(たいぐおしょう)のビジネス説法
「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶、大愚和尚(たいぐおしょう)が、ビジネスにまつわる疑問、悩みを“仏教の視点を持って”解決。今回のテーマは「他人の評価」。SNSだけではなく社内評価により心身を病んでしまうこともあるビジネスパーソンにおくる、和尚のアドバイスとは?
SNSが普及して精神を病みがちな現代社会
日本のSNS利用者の数は年々増え続けています。ICT総研の調査によれば、2021年末の国内ネットユーザーは、推定1億78万人。そのうちSNS利用者は、80.2%にあたる8149万人で、その数は月平均で10.1万人の増加を続けているそうです。
また、Glossom調査によれば、スマートフォンの1日の平均利用時間は20年「126.6分」から21年「136.3分」と7.6%増加。そのうちSNSについては20年「67.1分」から2021年「77.8分」15.9%増加しているといいます。なぜそれほどまでに、SNSの利用者と利用時間が増え続けているのでしょうか。その原因には、「交友関係を広げることができる」「気軽に情報の発信・拡散ができる」「情報収集のスピードに優れている」など、 SNSが持つ圧倒的な利便性がありましょう。
けれども、もっと本質的な理由があります。SNSの利用者と、その利用時間が増える最大の理由は、SNSを提供する企業が「利用者を依存させるためのアルゴリズムを組んでいるから」なのです。利用者の数が増えるほどに、広告収入が増えて企業が儲かる。利用時間が増えるほどに、広告収入が増えて企業が儲かる。
世界でも有数の時価総額を誇る企業が提供する SNSは、そのテクノロジーと利便性の高さから、今後その利用者数、利用時間が伸びることはあっても、減ることはないでしょう。しかしその陰で、精神を病む人が増えている現実があることを忘れてはなりません。
18年にペンシルベニア大学が発表した研究では、SNSの利用時間を1日30分に制限しただけで、気分の落ち込みや孤独感が減り、精神の健康が改善されることが報告されました。また、19年に医学誌『JAMA Pediatrics』に掲載された、カナダの高校生を対象とした「スクリーンタイムと青少年のうつの関連性」の調査論文では、SNS・テレビ・ネットなど全ての「スクリーンタイム(画面を見る時間)」が長いほど、孤独感や寂しさ、絶望感といったうつ状態が深刻になっていくことが明らかにされました。
誰かが投稿するたびに、「いいね」しなければならない関係。自分の投稿に「いいね」してもらうために、他人の投稿に「いいね」し続ける循環。自分に対する何気ないメッセージやリツイートなどに喜び、憂い、傷付く。そんな毎日を送っていれば、SNSを始めたことによって疲弊してしまいます。
法律をも変えたネット上の誹謗中傷――他人の評価がコワイ
また、インターネット上での誹謗中傷は今や社会問題となっており、日本でもネット誹謗中傷厳罰化に向けて法改正がなされました。これらは、決して他人事ではなく、SNSを常用している私たちの誰もが受けるものであり、知らず知らずのうちに精神を病んでしまうかもしれないのです。
仕事でもプライベートでも、 SNSが欠かせなくなった現代社会。誰もが他人の評価に怯えながら生きている現代社会。私たちの精神を守ってくれる人は、自分をおいて他にはいません。私たちは、自分で自分を守らなくてはならないのです。
ではどうすればいいのか。
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