「自分を最底、底、底に置きなさい」他人の評価に惑わされず“病み回避”するための心得:大愚和尚のビジネス説法(2/3 ページ)
インターネット成熟期の今、あらゆる情報の入手、あらゆる人とのつながりは全てオンライン上で完結する時代になった。しかし同時に、現代特有の“病み”がまん延するという現実も忘れてはならず、そこには少なからずインターネット中毒による影響があると分析する研究結果もある。大愚和尚に、SNSにまどわされず「他人の評価」とうまく付き合うコツを聞く。
評価を気にしない自分になる――ヒントは2600年前の「ブッダの言葉」にあり
実は今から2600年前のインドに、他人の評価を気にしながら生きるのではなく、自分の目的に向かって、意識を集中する生き方を提唱した人がいます。それがお釈迦さま、ブッダです。今回は、『ブッダの真理のことば 感興のことば』(中村元訳 岩波文庫)の中から、SNSから心を守るためのヒントとなる、ブッダの言葉を3つ、紹介いたしましょう。
【1】SNS依存を離れるためのブッダの言葉
「何ものかに依ることが無ければ、動揺することが無い。そこには身心の軽やかな柔軟性がある。行くこともなく、没することもない。それが苦しみの終焉であると説かれる」(感興のことば 第26章 20)
SNSで「いいね」をもらうために、他人の発信に「いいね」する。周囲から取り残されてしまう気がする。常にフォロワー数が気になって仕方がない。SNSを常用していると、発信する側も受信する側も、常に他人の目を気にしなければならなくなります。にも関わらず、SNSをチェックしないと漠然とした不安に駆られます。これはもう、立派なSNS依存です。
SNSに依り続ければ、動揺することが増えます。気が付けば、身心が重くなり、柔軟性を欠くようになります。他人の意見や趣味嗜好に刺激され、あちらこちらへと歩き回り、ついには疲れ果てて、身心が没してしまうことさえあるのです。
依存を離れるためには、
- 1 SNSを辞める、もしくは利用するSNSの種類を2つ以内に減らすこと
- 2 SNSをチェックする時間を短くすること
私の寺では、入門したての修行僧たちには、“スマホ断ち”をしてもらいます。若い修行僧ほど、最初は「世の中から置いていかれる」感に襲われ、不安に駆られます。けれども次第に、いかにそれまでSNSに縛られ、影響されてきたかに気付き、本来の自分を見つめられるようになります。
SNSに触れる機会と時間を減らす。あるいは思い切って断つことによって、SNSへの依存を離れることができます。
【2】他人の批判に動じなくなるためのブッダの言葉
「アトゥラよ。これは昔にも言うことであり、今に始まることでもない。沈黙している者も非難され、多く語る者も非難され、すこし語る者も非難される。世に非難されない者はいない」 (真理のことば 第17章 227)
「ただ誹(そし)られるだけの人、またただ褒められるだけの人は、過去にもいなかったし、未来にもいないだろう、現在にもいない」(真理のことば 第17章 228)
「黙っていても非難され、多く語っても非難され、少し語っても非難される。ただ誹られるだけの人、またただ褒められるだけの人は、未来にもいないだろう」というブッダの予言通り、ブッダ存命の時代から2600年の時を経た現代においても、人々の他者非難が止むことはありません。
私もYouTubeで『大愚和尚の一問一答』という、悩み相談番組を配信していますが、登録者が増え、広く人々に知られるほどに、非難と称賛が共に増えていきます。しかし、ブッダがアトゥラに伝えた先の言葉を心に刻んでいる私が、それらの非難や称賛に一喜一憂することはありません。
もしそこに批判的なコメントが残されれば、冷静に、理性をもって観察します。すると見えてくることがあります。それは、「よく観ず、よく聞かず、よく知らず」に非難してくる人がほとんどだということ。会ったこともない、話したこともない、よく知らない人が、その発信の文脈や内容をよく理解しないまま発した批判に、動じる必要はないのです。
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