「自分を最底、底、底に置きなさい」他人の評価に惑わされず“病み回避”するための心得:大愚和尚のビジネス説法(3/3 ページ)
インターネット成熟期の今、あらゆる情報の入手、あらゆる人とのつながりは全てオンライン上で完結する時代になった。しかし同時に、現代特有の“病み”がまん延するという現実も忘れてはならず、そこには少なからずインターネット中毒による影響があると分析する研究結果もある。大愚和尚に、SNSにまどわされず「他人の評価」とうまく付き合うコツを聞く。
【3】自らを省みて整えるためのブッダの言葉
「もし愚者がみずから愚であると考えれば、すなわち賢者である。愚者でありながら、しかもみずから賢者だと思う者こそ、『愚者』だといわれる」中村元訳『ブッダの真理のことば、感興のことば』(岩波文庫)
しかしながら、批判が必ずしも悪いことではありません。世間に広く公開されるSNS上での発信に、批判が来るのは避けられません。ただ、批判する者は、自分の批判が自分にとっても、相手にとってもどのような意味をもっているかを省みるだけの冷静な態度が望まれます。一方で、批判される者も、ただ批判されたことに怒ったり、悲観するだけであってはなりません。はたしてその非難が当たっているかどうか、その非難が何を意味しているのかを冷静に考えてみる――ぐらいの余裕がほしいものです。
時として批判の中に、「なるほど」と感心することがあったり、自らを省みるきっかけとなったりすることもあります。特に自分をよく知る人からの批判は、よくぞ教えて下さったと、後に感謝することが多いのです。自らを賢者だと思っていると、人からの批判を受け止められなくなります。自らを愚者だと思えば、人からの「的を射た」批判を冷静に有難く受け止めることができます。
他人の評価を気にしているのは「自分」
私自身は人からの批判を受けるとき、自分のエゴ(我)を意識して、自分をできるだけ「底」に置くようにしています。この世で自分を一番重要に、大切に扱ってほしいという感覚がエゴ(我)だからです。
そのエゴが批判によって傷付けられれば、腹も立つし、落ち込みもする。だからブッダの言葉にならって、自らを愚者だと開き直るのです。
「自分を最底、底、底に置いて、堂々と批判を受け止める」
すると、他者からの批判に怒ったり、悲観したりすることがなくなります。むしろ批判を受けたことで、謙虚さや、新たな視点を得ることができるのです。
他人の評価を気にしているのは誰か。他人の言動に怒り、羨み、妬み、憂い、傷付いているのは誰か。その「誰」に気付くことが、他人の評価に振り回されなくなる秘訣なのです。
著者:大愚元勝(たいぐ げんしょう)
佛心宗大叢山福厳寺住職。株式会社慈光マネジメント代表取締役。慈光グループ会長。僧名「大愚」は、大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意。駒澤大学、曹洞宗大本山総持寺を経て、愛知学院大学大学院にて文学修士を取得。 僧侶、事業家、作家・講演家、セラピスト、空手家と5つの顔を持ち、「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。
HPにて「お悩み相談」を受け付けているほか、YouTubeチャンネル「大愚和尚の一問一答」で国内外から寄せられた相談にも対応する。著書『苦しみの手放し方』(ダイヤモンド社)、『最後にあなたを救う禅語』(扶桑社)、『人生が確実に変わる 大愚和尚の答え』(飛鳥新社)など。
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