「中小企業淘汰論」はなぜ“炎上”しにくくなったのか 日本に残された時間:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
「中小企業は減らしたほうがいいよ」――。こうした「中小企業淘汰論」を掲げても、ネット上で炎上しにくくなっている。数年前であれば、すぐに燃えていたのに、なぜ話題になりにくくなったのか。背景にあるのは……。
炎上しなかった背景
そんな「中小企業の数を減らすべき」なんて口走ろうものなら、棍棒を振り回した人たちに袋ただきにされるような殺伐した時代に比べると、今回の櫻田代表幹事への風当たりは「そよ風」と言ってもいいくらい優しい。
大企業経営者の発言なのだから、もっと叩かれていてもおかしくないのに、往時のアトキンソン氏と比べるとずいぶんマイルドな反応だ。むしろ、「概ね同意します」「基本的には同じ考え」なんて好意的な意見の方が多いくらいなのだ。
では、なぜ櫻田代表幹事の「中小企業淘汰論」は炎上したかったのか。この3年弱で世の中のムードの何が変わったのか。
まず大きいのは、アトキンソン氏ら「中小企業再編」の必要性を唱える人々の主張が徐々に世の中に受け入れられるようになってきたことだ。アトキンソン氏が中小企業再編のためには必要不可欠だという、「継続的な最低賃金引き上げ」もここにきてようやく理解を示す声が増えてきた。
そこに加えて、個人的にはこの3年弱の間、多くの人が口に出さずともうっすらと感じ始めた、ある「違和感」が大きいのではないかと考えている。それは一言で言ってしまうと、「中小企業ぜんぜん淘汰されてないし、むしろ大量のバラマキで保護されてんだけど、なんかそういうのをやればやるほど、日本経済悪くなってない?」という違和感だ。
ご存じの方も多いだろうが実は今、日本は世界トップレベルで「中小企業の倒産が少ない国」だ。もともと日本は企業に対して異常なまでに「過保護」な国で、世界から奇異な目で見られるほど倒産が少なかった。内閣府の「日本経済2020−2021 ー感染症の危機から立ち上がる日本経済−」(令和3年3月)の中では、米国、英国、フランス、ドイツとの開業率・廃業率が比較されており、こう結論付けられている。
「廃業率は、英国が11%程度、米国が8%程度と、開業率と同程度の廃業率となっているなかで、我が国の廃業率は1.5%程度と圧倒的に低い」
そんなところにコロナが起きて、「コロナ倒産を防げ」を合言葉に政府がバラマキや無担保融資を続けた結果、帝国データバンクによれば、倒産件数が過去最も少なかった1965年に次ぐ2番目に低い水準になっているという。
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