プラスチック問題の解決が求められる消費財メーカー:フィデリティ・グローバル・ビュー(1/5 ページ)
国連のプラスチック汚染に関する国際条約は、海洋に流出する何百万トンものプラスチックゴミを削減する大きな一歩となりそうです。各国政府が具体的な取り組みを加速する中、フィデリティは消費財メーカーに対して、地球上最も重大な課題の1つに現実的な解決策を提供するよう働きかけています。
コルゲート、ネスレ、ユニリーバなどのグローバル大企業は、詰め替え用歯磨きチューブやリサイクルペットボトルなど、プラスチックゴミのない未来のために求められている製品やソリューションの開発に着手しています。しかし、それらが十分なスピードで進められていないことが問題です。
海洋生物に悲惨な結果をもたらすプラスチック
1980年代以降、消費者の嗜好の変化とともにゴミの量は飛躍的に増えて膨大になり、 大きな問題となっています。世界のプラスチックの年間生産量は約4億トンに達し、その約半分を使い捨ての容器包装類が占めています(注)。
注:Plastics statistics from UN environmental programme, World Economic Forum, OECD, Ellen Macarthur Foundation
ガラスに比べて安価で軽く、炭素排出量も少ないプラスチックは、製造業にとって大きなメリットがある一方、リサイクルされているのはわずか9%未満で、環境に与える影響は甚大です。毎分、ゴミ収集車1台分のプラスチックが海に流出し、海洋生物に悲惨な結果をもたらしていると言われています。
フィデリティは、生物多様性保全や循環型経済構築に関する幅広い取り組みの一環として、1日に数千トンのプラスチックを使用する大手消費財メーカー9社に対し、プラスチック汚染削減計画に関するエンゲージメントを実施し、意見交換を行いました。エンゲージメントは、アナリストの企業に対する評価をサポートするだけでなく、企業価値の向上や世の中に良い影響を与えるであろう変化を企業に促すためにも活用されています。
なお、エンゲージメントの対象は、海洋への流出が確認されたプラスチックパッケージの量に基づき選択されました。
成すべきことの規模、そして真の変革を実現するために必要な投資額を考えると、今回エンゲージメントを実施した多くの企業では、自社目標の少なくとも一部を達成するのにも苦戦することが予想されます。しかし、ネスレ、ユニリーバ、コカ・コーラなどの企業では目標達成への進展が確認されました。
目標導入の促進と企業への働きかけは、今後サステナブルな成果を推進するフィデリティの取り組みの中心となり、プラスチック使用の削減は、これらの企業のネット・ゼロ目標の達成にも大きく貢献すると考えています。例えばネスレは、商品パッケージのカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)が、企業全体の排出量の12%を占めるとしています。
注:2018年の6位に記載のある7-Elevenは、セブン&アイ・ホールディングスのグループ会社である北米7-Eleven, Inc.を指し、Break Free from Plasticによれば、プラスチック汚染の大部分を同社のエリア・ライセンス提供先である7-Eleven Australiaが占める。7-Eleven Australiaは、2007年にオーストラリア包装協定機構(Australian Packaging Covenant Organization、APCO)に加盟、2018年からはSimply Cupsと共に持ち帰り用カップの回収・処理・リサイクル活動を実施するなどプラスチック削減に向けた取り組みを推進しており、2019年以降のリストには含まれていない。
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