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プラスチック問題の解決が求められる消費財メーカーフィデリティ・グローバル・ビュー(2/5 ページ)

国連のプラスチック汚染に関する国際条約は、海洋に流出する何百万トンものプラスチックゴミを削減する大きな一歩となりそうです。各国政府が具体的な取り組みを加速する中、フィデリティは消費財メーカーに対して、地球上最も重大な課題の1つに現実的な解決策を提供するよう働きかけています。

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EMFへの参画

 エンゲージメントを実施した企業のほとんどは、エレン・マッカーサー財団(EMF)が主導する「新プラスチック経済グローバル・コミットメント」に署名した参画企業です。このコミットメントの目標と方法論は、当社が推奨するサーキュラーエコノミー(循環型経済)への進展を測定していくものです。

 EMFは、企業が昨今のようにサステナブルな解決策を模索し始める10年以上も前に設立され、大手企業にプラスチック使用量の目標を掲げて進捗状況を報告するよう説得し、他の団体では成し得なかったことを成功させています。そのEMFが公表したグローバル・コミットメント2021年進捗レポートでは、署名企業のバージンプラスチック(再生素材ではない、新しく生産されたプラスチック)の使用量が減少していることが報告されました。しかし、依然として企業はさらなる取り組みが必要です。

 そのような中、当社は、業界全体で5つの重要なベストプラクティス(最も望ましい方法)を推奨しています。

1.リサイクラビリティの定義の統一

 第1に、EMFが定義する「実際に、かつ大規模に(リサイクルを行う)」を念頭に、リサイクラビリティ(リサイクル可能率)の定義を統一する必要があります。現状では、包装材が「実際に」リサイクル可能かどうかではなく、「理論上」リサイクル可能であることを報告している企業をよく見かけます。

2.企業全体の廃棄量目標の設定

 第2に、プラスチック削減目標は重要ですが、その他あらゆる種類の削減も廃棄物ヒエラルキー(廃棄物管理の優先順位)の上位優先事項にすべきです。ベストプラクティスとしては、企業はバージンプラスチックに限定した削減目標だけでなく、企業全体の廃棄量についての目標を持つべきです。

3.信頼できるリユース戦略の推進

 第3に、たとえ現時点では業界レベルでみると小さな規模であっても、企業は信頼できるリユース(再利用)戦略を持つべきです。

4.科学的根拠に基づくアプローチの採用

 第4に、予期せぬ結果を防ぐためにも、当社は科学的根拠に基づくアプローチの採用を企業に奨励しています。

5.業界を超えたコラボレーションとベストプラクティスの共有

 最後に、当社は企業に対し、プラスチック汚染が世界的な問題であることを認識し、業界を超えたコラボレーション(協働)とベストプラクティスの共有を奨励しています。

内に秘められた課題

 世界最大の飲料メーカーとしてプラスチックを大量に使用するコカ・コーラは、ずいぶん前から、ボトリン グ事業を地域の業者に委託しています。コカ・コーラのサステナビリティパフォーマンスはさまざまですが、 2025年末までに、全てのパッケージに使われるプラスチックのリサイクル可能か再利用可能なものへの切り替えを表明しています。ほとんどの提携先ボトラーは、すでにその目標に近づいています。

 しかし、コカ・コーラのプラスチック容器がリサイクル素材だとしても、実際にリサイクル処理しペットボトルとして再生されるのは一部に過ぎません。そのため、同社が使用するプラスチックの影響を長期的に抑えるためには、新たなアプローチを採用する必要があります。

 コカ・コーラは、新型コロナウイルスの影響による家庭内消費の増加に伴い、詰め替えと返却ができる容器の利用が広がると強気に予想し、リサイクルのインセンティブや資金源となるデポジットリターンシステム(DRS、注)に関して方針転換を行いました。これは、大量リサイクルを支援するために必要なインフラや法の整備が遅れていることに対する業界共通の懸念を反映していると思われます。例えば米国では、現在DRSが導入されているのは10州に過ぎませんが、これが国レベルで導入されれば、変革の原動力になると考えられます。

注: デポジットリターンシステム(DRS)は、飲料製品のペットボトルにあらかじめ少額のデポジット(預託金)を課し、ペットボトルが返却される時にデポジットが返金される仕組み。


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