プラスチック問題の解決が求められる消費財メーカー:フィデリティ・グローバル・ビュー(3/5 ページ)
国連のプラスチック汚染に関する国際条約は、海洋に流出する何百万トンものプラスチックゴミを削減する大きな一歩となりそうです。各国政府が具体的な取り組みを加速する中、フィデリティは消費財メーカーに対して、地球上最も重大な課題の1つに現実的な解決策を提供するよう働きかけています。
積極的な目標設定が必要
当社がエンゲージメントを実施した全企業が、何らかの形でバージンプラスチック使用量の削減を目標としていますが、ユニリーバは、大手消費財メーカーで唯一、バージンプラスチックと再生プラスチック双方の使用量を削減することを目標に掲げています。
ユニリーバの活動は業界のベストプラクティスだと言えるでしょう。プラスチックを粉砕して粒状にし、新しい製品の原料として使用するメカニカルリサイクル(物理的再生法)の増加や、より複雑なケミカルリサイクルを可能にする技術や戦略も、うまく機能すれば、積極的な取り組みと言えます。しかし長期的には、プラスチックの使用量そのものを減らすことを考えなければなりません。
2020年の1年間で70万トンのプラスチックを使用したユニリーバは、2025年までに絶対使用量10万トンの削減目標を掲げ、バージンプラスチックについては50%の削減を掲げています。直接比較はできないものの、当社がエンゲージメントを実施している他の企業では、バージンプラスチックの削減目標は5〜33%の範囲にとどまっています。
供給面の課題
しかし、削減目標の観点においても、再生プラスチックのサプライチェーン問題が課題となっています。
例えば、清涼飲料水のボトルなどに使用される再生プラスチック素材(rPET)の供給について、多くの企業が課題として挙げています。食品包装など食品グレードの再生プラスチックPCR(ポストコンシュー マーリサイクルプラスチック)は、食品グレードの材料を必要としないファッション業界により購入され、これら再生プラスチックの価格を押し上げています。
ファッションアイテムは一般的に使用後にリサイクルされないため、リサイクル可能なプラスチックは事実上、サーキュラー・システムから排除されてしまいます。当社のアナリストチームは、ファッション企業とのエンゲージメントで、この問題を提起しています。
いずれにせよ、企業が自社目標を果たすためには、かなり大規模なリサイクルパートナーが必要となります。当社がエンゲージメントを実施した企業は、目標を設定することで、リサイクル市場を活性化させその生産能力を生み出しています。コカ・コーラの最大級ボトラーとして知られるCCHは、すでにリサイクル工程の内製化を進めており、市場全体が急速に拡大する兆しをみせています。
回収とリサイクルを義務化するために重要な役割を果たすのが政府です。しかし、過去2年間の新型コロナなどの影響もあり、政府の動きは鈍いままです。
関連記事
- 世界の秩序が変わり、冷静に判断する時
欧米の支援を受けるウクライナとロシアの衝突が続く中、これまで以上に中国の動向が注目されています。フィデリティ・インターナショナルのCIOが今後想定されるシナリオとグローバル経済の行方を解説します。 - “壮大なるチェス盤”の再構築と高まるスタグフレーションリスク
世界の秩序が再定義され、スタグフレーションリスクが高まっています。フィデリティ・インターナショナルの運用チームが4〜6月期に重要になると考える3つのテーマと各資産クラスへの影響についてご紹介します。 - 金利ショックで膨れ上がる債務コストー最大の影響は日本ー
金融引き締め政策はすでに膨れ上がった債務返済コストを一段と増やす恐れがあり、インフレとの戦いのために利上げを実施しようとしている中央銀行が巻き添えを食ってしまう危険性があります。 - ウクライナ戦争が引き起こす企業と投資家の社会的、倫理的ジレンマ
ロシア人に生活必需品を売るべきか――。ウクライナ戦争は企業に難しい課題を投げかけました。企業はESGと倫理的な配慮の間でどうバランスを取るべきでしょうか。フィデリティの取り組みとともにご紹介します。 - ポストコロナ時代の株主総会 バーチャル株主総会はなぜ問題か?
新型コロナの発生以降、多くの企業はバーチャル株主総会の開催に移行しました。しかし、こうした流れは、コーポレート・ガバナンスにおいてマイナスとなり、投資家に不利益をもたらす可能性があります。
© フィデリティ投信株式会社 All Rights Reserved.