新しい買い物体験ニーズ1位の日本 海外で広がるBOPISは国内の小売店に浸透するのか:コロナ禍が変える買い物体験(2/3 ページ)
コロナ禍をきっかけに、新しい買い物体験が世の中に浸透しつつあります。日本は特に新しい買い物体験ニーズが強いことが調査から分かりました。海外の小売店で広がる「BOPIS」という買い物体験は日本で定着するのでしょうか?
BOPIS導入までの2つの課題とは?
――日本でも少しずつBOPISが登場しているようですが、今後増えていくことはあるのでしょうか?
郡司氏: アメリカでBOPISの継続利用意向が高い理由はコロナ禍の影響が大きいですが、日本ではまだ経験したことがない人が多いというだけで、今後受け入れられる可能性は十分にあると思います。
また、BOPISに限らずClick&Collect(ECサイトで商品を購入し、自宅以外の場所で商品を受け取る買い物スタイル)に関しては地方に浸透していくことも考えられます。例えば、人口減少の影響で地方のスーパーの来店客が減ると、在庫ロスを出さないように品ぞろえが悪くなるケースがあります。そこで、顧客が事前にECで欲しい商品を注文して店頭で受け取れるサービスを導入すれば、店舗と顧客の双方にメリットが生まれるでしょう。実際、中国では地域のパパママストア(小規模店舗)がEC商品の受け取り拠点になる事例も増えています。
――これからBOPISを導入する小売企業にとって、課題となるのはどのような点でしょうか?
郡司氏: 店舗の在庫や陳列状況を正確に把握することが重要です。BOPISは基本的に店舗の在庫を使うことになるので、規模の大きい店であるほど商品を探すための移動時間が長くなるし、SKU(在庫保管単位)が多い店であるほど商品がどこに何があるのかを把握するのが難しくなります。しかも店舗のレイアウトはオンライン注文用に最適化されていないので、複数の商品をいかに無駄なくピックアップできるかで生産性は大きく変わると思います。
――店舗在庫を使わないBOPISの場合、上記の問題をある程度解消することも可能なのでしょうか?
郡司氏: そうですね。例えばアパレルの場合、1つの店舗内に全部の色やサイズを置いておくのは難しいため、ECで注文が入った商品を倉庫から指定の店舗に届け、顧客がその店舗に取りに行く倉庫出荷型のBOPISが多くなっています。店舗の在庫を使わずに倉庫から出荷するのであれば、店舗の在庫や陳列を把握する必要はないです。それに比べ、ネットスーパーのようなケースでは店舗在庫を使うことが多いため、店舗在庫を把握しておく必要があります。
――その課題解決には、やはりテクノロジー活用がカギになるのでしょうか?
郡司氏: もちろんテクノロジーは有効ですが、そもそもテクノロジーを導入するためのデータがそろっていない店舗が多いのが現状です。オンライン注文のリストが印字された紙を見ながら商品を人力で探し回り、ピックアップした商品をペンでチェックしていく、というアナログな方法を取っている店舗もありますし、ハンディスキャナに表示された順序に従ってピックアップしているところもあります。果たしてそれがデータに基づいて最適な順番で表示されているのかというと疑問があります。そこはまだまだ改善の余地がありますし、逆に言えば他社との差別化を生み出すチャンスと捉えることもできるでしょう。
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