「大阪王将」勘違いで「餃子の王将」株価も下落? 意外と多い「とばっちり」事例をまとめてみた:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
「大阪王将」の不祥事につられて、「餃子の王将」の株価も下落している。これが「自業自得」の場合はまだいいが、市場では社名が似ているばかりに「とばっちり」で風評被害に遭う事例が後を絶たない。
「スタジオよんどしい」と「よんどしい」
非上場企業同士のとばっちり事例もある。『マクロス7』や『ベルセルク』といった大型タイトルを制作しているアニメスタジオの「スタジオよんどしい」が、偶然にも似た名前の「よんどしい」が倒産した際に勘違いされたことがある。
この事例ではまとめサイトやSNSの口コミを中心に一挙に拡散され、アニメスタジオ公式アカウントからは当時の困惑している様子がみて取れる。
本件は非上場企業ということもあり、件の公式アカウントも注目に乗じて採用募集を行うポジティブな姿勢を見せることもあって、この問題はそこまで大問題にならなかった。しかし、「倒産」に関する誤った情報の拡散は信用の毀損(きそん)を招く恐れがあるし、上場企業であれば株価の大暴落と混乱は避けられない。やはり単に笑える事例というわけにもいかないだろう。
ありがた迷惑?とばっちりで株価が上がる事例も
実は、似た社名に関する風評被害による株価下落とは反対に、勘違いによって似た会社名の株価を大きく上げる事例も少なくない。
もちろん、これは素直に喜べない事例である。なぜなら、これは勘違いが発端の株価上昇であることから、最短で当日ないしは週の終わり頃には上昇は帳消しになるからだ。いくら株価が短期で上がっても、「自社の相場を荒らされてしまった」という意味では喜べない。
ここからはそんな「勘違い買い」事例をピックアップする
米「Zoom」と「ズーム」
Zoomと聞いて真っ先に思いつくのはオンラインミーティングツールのZoomではないだろうか。2020年のコロナショックからいち早く立ち直り、社会的なオンラインミーティング需要を追い風にして大幅に業績を拡大したZoomだが、この会社はもちろん米国企業であり、日本では上場していない企業だ。
しかし、そのZoomと奇しくも名前が一致してしまったズーム(6694)がストップ高になるまで買われたのである。ズームの事業は音楽用の電子機器メーカーということで、大幅に“勘違い買い”が入ったのである。
これにはさすに会社側も驚いたのか、「当社は、ビデオ会議サービスを運営する米国のZoom Video Communications, Incとは一切関係ありません。」とIRページで公表せざるを得なかったようだ。
「ヤマト(非上場)」と「ヤマト・インダストリー」と「ヤマト」
ほかにも、液体のりの金字塔である「アラビックヤマト」を製造する「ヤマト」の勘違い事例もピックアップしたい。
その発端は、20年1月に東工大の研究チームが発表したがん細胞の消失に関する報道にある。これは、薬剤に液体のりの主成分である「ポリビニルアルコール」を混ぜ合わせることで、がん細胞の治療効率が大幅に向上したというものであった。
そもそも、このニュースの中では「ポリビニルアルコール」を分かりやすく伝えるための例えとして「液体のり」を挙げたに過ぎず、アラビックヤマトががんに効くという報道でもなかった。それでも、「液体のり」のワードに反応した市場参加者が、似た名前のヤマト・インダストリー(7886)をストップ高にしたり、建設業で全く業態が異なるヤマト(1967)にも買いを入れてしまったのだ。
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