なぜ純木造ビルに挑戦? 耐火・耐震性を保つための技術の粋:日本の林業を活性化できるか(2/5 ページ)
再生可能な資材である「木材」が注目を集めている。大林組が、柱・梁・床・壁全てを木造で構成した純木造の建築物「Port Plus」を建設した。大林組はなぜ純木造高層ビルに挑戦したのか?
課題は耐火性・耐震性
岡さんはPort Plus建設にあたり、「純木造で耐火性建築物を実現するには、クリアすべき多くの課題があった」と話す。1つ目は耐震基準を満たすことだ。
Port Plusの構造体は十字架型のユニットになっており、工場で柱と梁を完成させた状態で運送し、現場で組み立てている。ユニットは木材の特性を考慮しながら、強度を高めるために3層構造になっている。
重要になったのは、柱と梁をどのように組み立て、接合するかだ。Port Plusでは、柱・梁という部材同士を剛接合した。「剛接合」とは、部材の接合部を完全に固定し、水平方向の力がかかっても接合部が回転・変形しないということを指す。これにより、水平方向の力に対抗できる強い骨組を作り上げた。このような構造を建築業界では「ラーメン構造」と呼んでいる(ラーメンとは「枠」の意味)。このラーメン構造により、どの方向からの揺れ、圧力にも耐えられるようになった。
さらに、3層を固定するために節がある鉄筋を打ち込み、中に接着剤を充填することで強度を高めた。岡さんは「建物にとって最も恐ろしいのは『倒壊』です。斜めになっても壊れても自立を保つために、木材を使い分け、強さと粘りを実現しました」と話す。
2つ目は耐火性だ。Port Plusは同社の木造耐火技術「オメガウッド(耐火)」を採用した。Port Plusは、人通りの多い1階南側の柱は3時間耐火、その他の部分では2時間耐火を実現している。法的に求められているのは2時間耐火のため、木造の3時間耐火を実現したのは国内初だという。
「通常の建築物であれば、耐火性のある素材を使用すれば規定を満たすことができるのですが、木材を使用するためさまざまな検証をする必要がありました。『オメガウッド(耐火)』では、木造の構造体の周りを、石こうボードと木材で覆っています。木は燃えて炭になると燃えにくくなるので、燃えしろ層として木材を採用しました。構造体を窯の中で既定の時間あぶり続け、熱が下がってから外側の層(石こうボードと燃えしろ層)を取り除き、構造体が焦げていなければ合格になります」(岡さん)
Port Plusは、新技術を駆使することで、木造でありながらも鉄筋、コンクリートの建築物同等の耐火性、耐震性、遮音性を実現したという。
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