なぜ純木造ビルに挑戦? 耐火・耐震性を保つための技術の粋:日本の林業を活性化できるか(3/5 ページ)
再生可能な資材である「木材」が注目を集めている。大林組が、柱・梁・床・壁全てを木造で構成した純木造の建築物「Port Plus」を建設した。大林組はなぜ純木造高層ビルに挑戦したのか?
木造の可能性
そもそも、なぜ大林組は耐震性、耐火性の担保など課題が多いなか、純木造建築物を建設したのか。
岡さんによると、木材の使用はCO2削減に効果的だという。木が育つ過程で吸収したCO2は、伐採されて木材となった後も炭素として定着される。CO2を「固定化」する機能として知られており、この機能がCO2削減に貢献するとされている。Port Plusでは1990立方メートルの木材を使用しており、これにより約1652トンのCO2を固定。材料製作から建設、解体・廃棄までのライフサイクル全体では、鉄骨造と比べて約1700トンのCO2削減効果を見込む。
もう1つ、同社がPort Plusを建設した背景には「日本における林業の活性化」に対する思いがある。
「世界的に森は減っていますが、日本の森は増えています。しかし、木々の多くが高齢です。木は樹齢50年を超えると炭素の固定量が減ってしまいます。CO2を固定するという文脈でも、森は新陳代謝をすることが重要です。樹齢50年を超える木は、木材として活用し、新たな苗木を植えるべきなのですが、現状は林業が衰退してしまっているため、十分にはできていません」(岡さん)
日本は戦後の経済復興の際に、人工林を多く整備した。しかし、海外の木材のほうが価格が安く、かつ加工済みのものが流通しており使い勝手が良いため、日本の木材は売れなくなり、人工林は放置されたという。
「日本には木が有り余っていますが、価格が高く売れ行きは悪いです。日本の木材が高いのは、森の多くが斜面地であることによる生産性の悪さや、流通、供給の体制がしっかり構築できていないことが原因です。Port Plusを皮切りに、木材の魅力を発信し、木材の需要を増やしたいと考えています。需要と供給を両軸で増やし、森林を循環させることで、日本の林業の体制が整っていくことを願っています」(岡さん)
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