「ハゲはセクシー」な国もあるのに、なぜ日本人は恥ずかしがるのか 背景に「加藤茶」と「アデランス」:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
脱毛ビジネスが好調である。男性だけでなく、子どもも脱毛エステに通っているとかで。空前のブームがうかがえるわけだが、欧米で注目されている「ハゲ」も、日本で定着するのだろうか。
海外の動きが日本にも
さて、ここまで言えば、筆者が何を言わんとしているかお分かりだろう。欧米豪では、男というのは体にムダな毛がないツルツル肌こそが美しく、清潔で、セクシーという常識が広まっている。そんな「ツルツルへのポジティブイメージ」がそのまま「ツルツル頭」にものっかって、プラス効果となっている可能性がある。
ということは、男性の全身脱毛が新たなムーブメントとして広まってきている日本でも、この流れを再現することができるかもしれないというワケだ。
「いやいや、そういう問題じゃねえって。欧米人のハゲは絵になるけど、日本人のハゲはなんかみじめなんだよね」と卑屈になってしまう人もいるだろうが、そういうネガイメージも戦後のムーブメントの中でつくられたものだ。
実は戦前から1950年代くらいまで「ハゲ」は、今ほど後ろ向きなイメージではなかった。もちろん、真剣に悩む人もいて戦前から育毛剤がたくさん売られていたが、カツラを被って隠すほど恥ずかしいものではなかった。
例えば、戦前には「光頭会」なんて「ハゲ自慢コンテスト」が開かれて、36年には国会でもイベントが催された。当時の新聞には、微笑みを浮かべるハゲ代議士10人が並んだ写真とともにこんな見出しが踊っている。
「ハゲ組 入賞者 廿代から輝く 頭で來れば既に大臣格」「特異!凶作型 今議会一番乗りも禿の功名」(読売新聞 1936年5月19日)
トレンディエンジェルの斎藤さんのように「自虐ネタ」にしていたわけではない。ハゲは単に「髪がない人」という扱いであり、それ以上でもそれ以下でもなかった。「個性」「キャラクター」のひとつとして市民権を得ていた。
これは戦後も変わらない。50年になると、米国から国際ハゲ頭協会のフランシス・J・パーニック氏が来日してこのように呼びかけた。
「ハゲは神様の意思にもとづくもので神聖だ。だから恥ずかしがることなんかちつともない。協会はみんなでこのハゲを祝福するための国際的な集まりだ。アメリカでは有名なコカコーラ副社長のジン・フアリー氏も有力なメンバーだ」(読売新聞 1950年1月25日)
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