「ハゲはセクシー」な国もあるのに、なぜ日本人は恥ずかしがるのか 背景に「加藤茶」と「アデランス」:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
脱毛ビジネスが好調である。男性だけでなく、子どもも脱毛エステに通っているとかで。空前のブームがうかがえるわけだが、欧米で注目されている「ハゲ」も、日本で定着するのだろうか。
アデランスのマーケティング戦略
アデランスは69年、女性かつら大手ボア・シャポーの営業マンだった根本信男氏(現・会長)が、「男性用かつらは“ハゲを隠したい”という切実な欲求から使用しているので1度使用した客は2個目、3個目と買いつづける」(日経ビジネス 1984年10月1日)ということに気付いたことで創業、瞬く間に急成長した。
つまり、ハゲてはいるけれど、「カトちゃん」のようにみんなに笑われたくない、というハゲ男の見栄とプライドをガッチリつかんだのである。そこに加えて見事なのは、先ほどの「ハゲ=前向きに生きるためには隠すべき」ところも巧妙に宣伝に組み入れた点だ。
それを象徴するのが、72年から開始されたテレビCMである。
白い一戸建て住む家族。かわいい娘2人と、美しい妻が楽しそうに食卓を囲む中で、男性だけは鏡の前で薄い毛をなでつけながら浮かない顔をしている。ところが、急に夫の髪がボリュームアップ。ニコニコ顔で出勤しようとする父親に娘たちが抱きついて、こう言う。
「パパ、アデランスにしてよかったね」
ハゲを隠せば、仕事も順調で家庭も円満。これは裏を返せば、ハゲというのは家族や愛する人を笑顔にできない「不幸の象徴」だと言っているのに等しい。アデランスは、「おずおずと神経質」になりがちだったハゲ男性にとっての「心の処方せん」としてのカツラを、日本で初めてテレビの力を用いて訴求したパイオニアだったのだ。
このあたりの見事のマーケティング戦略は、『日本のおじさんたちが、「アデランス」をかぶらなくなったワケ』にも詳しく解説しているので、興味のある方はお読みいただきたい。(関連記事)
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