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「乗客1000人未満」でローカル線を廃止? 存廃議論「国は積極的に関与すべき」杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/9 ページ)

国土交通省が7月25日に「地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する提言」を発表。新聞やテレビなどで「乗客1000人未満のローカル線は存廃論議」と報じられているが、断片的な報道より、原典で真意を読み取ってほしい。

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 ある朝のニュースショーを見たら「日中は乗降客がいません。夕方は駅に人がいましたが、SL列車を撮影するだけでした」と、いかにも「乗客がいない」をアピールしていた。SLを見て磐越西線だと分かったけれども、SLが走るといえば土休日だ。地方ローカル線の主な役割は平日朝の通学輸送だから、曜日も時間帯も外しておいて「乗客がいない」はひどい。これでは「あんな路線はいらないよね」という印象を持たれてしまう。

 本連載の読者には承前の話だけれど、そもそも「乗客1000人未満」という見出しもかなり乱暴な話だ。正しくは「平均通過人員が1000人/日未満」である。「1年間の集計で1日に1キロメートル当たり何人の乗客がいたか」という数字で、乗客の総数ではない。これは複数の路線の営業成績を比較するための指標で、あえて例えれば「学力偏差値」である。

 5教科の総合偏差値が低ければ学力が低い。しかし偏差値の低い子だって得意科目はある。理科や国語など1教科は飛び抜けて好成績かもしれないし、美術や体育は算入対象外だ。それはローカル線の地域ごとの役割に通じる。「平均通過人員」が分かりにくいからこそ、具体的な赤字金額の報道が注目された。


米坂線小国駅。JR東日本によると19年の平均通過人員は500人/日未満。先日の大雨で橋梁が流出。存廃論議が始まるかもしれない(07年撮影)

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