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「乗客1000人未満」でローカル線を廃止? 存廃議論「国は積極的に関与すべき」杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/9 ページ)

国土交通省が7月25日に「地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する提言」を発表。新聞やテレビなどで「乗客1000人未満のローカル線は存廃論議」と報じられているが、断片的な報道より、原典で真意を読み取ってほしい。

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 JRが「沿線自治体に今後の運営を相談したい」という事情は「乗客減は主に沿線の人口減少が理由であり、JRだけの問題ではない」と考えているからだ。「廃止したい」ではなく「相談したい」という態度は、JRが発足したときの大臣指針「路線の適切な維持、仮に路線を廃止しようとするときも、国鉄改革の実施後の輸送需要の動向等を関係自治体等に対して十分に説明すること」を求められたから。理解を得るまで廃止届を提出できない。理解を得るため、公共交通を担う責任を果たすため「バス転換」で運行継続を提案する。

 しかし、報道などで「2000人/日未満で相談」が先走りしてしまい、「2000人/日で足切り」という認知が広まってしまった。こうなると、JRから「この路線は2000日/未満になりました」と宣告された沿線自治体は「鉄道を続けたいなら金を出せ、出せないならバス転換を容認しろ」と受け取ってしまう。

 いままでもいくつかのローカル線で「話し合いに応じればお金とバスの話になる。だから話し合いには応じない」という態度が見られた。しかしこれは悪手だ。結論を先延ばしにすれば時間切れ。JRは大臣指針「十分に説明すること」を満たしているから廃止届けを出せる。では沿線自治体はどうすべきか。話し合いの場で「沿線にとって鉄道がどれだけ必要なものか、今後、どのような形で営業成績に貢献できるか」を説明すべきだ。

 必要な物を手に入れたいなら、取りに行くべきだ。待っているだけでは解決できない。


18年に廃止されたJR西日本の三江線。JR発足後、初めて全長100キロメートル以上の路線が廃止された。沿線自治体からの廃止反対の思いは通じなかった

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