人は変化を好まない それでも、総務が会社を変えるには?:「総務」から会社を変える(3/3 ページ)
多くの社員は、変化を好みません。それでも、総務は会社に変化をもたらさなければなりません。どのように取り組めば社内を変えられるのか、総務が知るべきチェンジマネジメントの考え方をお伝えします。
総務がファースト・ペンギンに カギは“じわじわ横展開”
上位2割をまず作る、と先述しました。もう1つの方法として、総務が最初の事例になるという手もあります。いわゆるファースト・ペンギンに総務自身がなるのです。総務がファースト・ユーザーとして活用し、効果があれば、その施策を現場にも取り入れる際、強力な説得材料となりますし、現場の納得感も得られます。
総務で最初に導入して効果検証しながら、次は、隣の人事部で導入してみて、その次には問題意識の高い営業部で使ってもらう──など、じわじわと事例を増やしていき、どこかの段階で一挙に全社展開をしていくという方法もあるでしょう。
筆者が編集長を務める総務専門誌『月刊総務』での取材を通じて感じるのは、この“じわじわ横展開”が、総務にとってチェンジマネジメントにおける一つの勝ちパターンだということです。一気に全社導入して、どこかで行き詰まると、リカバリーがなかなか難しくなります。小さなところから始めて、課題があれば順次つぶして進めていけば、こうした失敗は防げます。
また、施策の企画段階から事業部など他部署を巻き込み、参加感を醸成していくのも効果があります。プロジェクトチームを組成して、その中に他部署のメンバーを数多く配置する手法などは、オフィス移転の際にも多く見られます。こうしたチームを常設するならば、委員会活動に巻き込む、という方法もあります。例えば「オフィス美化委員会」を設置し、他部署のメンバーにも参加してもらうようなケースです。
総務のチェンジマネジメントについていろいろと記しましたが、ポイントは「従業員のおのおのが、変化した後の具体的なイメージを持てるか」どうかです。身近な事例を示すことで、変化への抵抗感を和らげるような進め方が必要です。
著者プロフィール・豊田健一(とよだけんいち)
株式会社月刊総務 代表取締役社長、戦略総務研究所 所長
早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、戦略総務研究所 所長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアムの副代表理事や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。
著書に、『リモートワークありきの世界で経営の軸を作る 戦略総務 実践ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター、以下同)、『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務』
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