「54歳から管理職」も──“働かない60代”を生ませない、4社の努力:改正高齢法の実情(3/3 ページ)
人材不足が進む中、企業にとってベテラン社員の活用が重要となっている。しかし、ベテラン社員のモチベーション低下やスキルの陳腐化などに悩む企業が多い。“働かない60代”を生まないために、どのような取り組みをすべきか──。
月10日勤務や半日勤務など選択肢が多い、大手銀行グループ
高齢者を含めたダイバーシティーに配慮した、自由度の高い働き方に対するニーズは高い。
再雇用制度を導入する多くの企業がフルタイム勤務を基軸にしている。しかし、70歳までの就業となると本人の健康状態や家族の事情によりフルタイム勤務が難しい事態も想定される。
19年10月から定年後再雇用年齢を70歳に引き上げた大手銀行グループは、非正規のパートタイマー社員も含めて働き方の選択肢を6つ用意している。フルタイム以外に月10日勤務や半日勤務などのパターンを設け、本人の希望で選択できる。実際に家族の介護でデイサービスの送迎をしている社員が半日勤務を選択するケースや月10日勤務を選択する女性社員も多くいる。
また、大手不動産管理業では65歳定年制度を導入しているが、従来の再雇用制度も存続し、本人の希望でいずれかを選べるようにしている。業種の特性から勤務場所は本社・支社以外にマンション、ビル、商業施設など物件ごとに点在している。勤務形態も早朝から深夜まであり、管理コード上は300パターンもあるという。定年延長社員はフルタイム勤務が原則だが、再雇用社員の働き方は勤務先と話し合い、隔日勤務の週3日勤務や1日5時間の短時間勤務の社員もいるなど柔軟な運用を行っている。
企業に求められる対策は
高齢社員の増加にとどまらず、新卒人材や女性の人材の確保と定着の観点から働き方の多様化のニーズがこれからも高まっていくことは間違いない。折しもコロナ禍の在宅勤務中心の働き方に変わる中で時間と場所に縛られない自由度の高い働き方が浸透しつつある。
人口減少下の中で企業の発展と持続的成長を図るためには、人材活用の在り方を考え、自社に最適な70歳就業システムの構築を急ぐべきだろう。
関連記事
- 「氷河期の勝ち組」だったのに……40代“エリート課長”に迫る危機
自分をエリートだと信じて疑わなかったサラリーマンが、社内の方針転換により出世のはしごを外されることがある。エリート意識や、能力主義への妄信が生む闇とは──? - 年収が半減!? “働かない60代社員”を増やす、再雇用制度のひずみ
70歳までの就業機会の確保を努力義務とする改正高齢法への企業の対応を見ると、「60歳定年を維持したい」という企業の本音が透けて見える。そんな対応が生んだ、“働かない60代社員”を増やす、再雇用制度のひずみとは? 人事ジャーナリストの溝上憲文氏が解説する。 - “スーツ姿の客”がネットカフェに急増 カギは「PCなし席」と「レシートの工夫」
コロナ禍で夜間の利用者が激減し、インターネットカフェ業界は大きな打撃を受けた。そんな中、トップシェアを誇る「快活CLUB」では、昼にテレワーク利用客を取り込むことに成功、売り上げを復調させた。そのカギは「PCなし席」と「レシートの工夫」にあるという。どういうことかというと……。 - 「全員70歳まで雇用は難しい」──改正高齢法から1年、明らかになる企業のホンネ
70歳までの就業機会の確保を努力義務とする改正高年齢者雇用安定法(高齢法)が2021年4月に施行されて1年が経過した。企業の対応の現状や、担当者が抱えるホンネとは? 人事ジャーナリストの溝上憲文氏が解説する。 - 実は真面目? 現代的な「働かないおじさん」5つのパターン
「働かないおじさん」という言葉を目にする機会が増えた。「窓際族」と呼ばれた時代とは違い、現在は「本人としては、真面目にコツコツやっている」人が多いと、筆者は解説する。現代的な「働かないおじさん」5つのパターンとは? - 格差が広がる日本 週休3日の“貴族”と、休みたくても休めない“労働者”
「週休3日」に注目が集まっている。大企業が相次いでこうした先進的な制度を導入する陰で、休みたくても休めない労働者の存在が置き去りにされている。日本の働き方改革は、どこへ向かうのだろうか──。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.