開催経費倍増・AOKI収賄疑惑──東京五輪がもたらしたものとは 閉幕1年で考える:五輪の「その後」(2/4 ページ)
東京地検特捜部が東京五輪組織委員会元理事の高橋治之氏や、AOKIホールディングスの青木拡憲元会長ら4人を受託収賄や贈賄の疑いで逮捕した。閉幕から1年。東京五輪がもたらしたものを考察する。
新設6施設中5施設が赤字見込み
政府や組織委、東京都、そして五輪開催を翼賛したメディアがことあるごとに喧伝していた「東京五輪のレガシー(遺産)」という言葉がある。これは、五輪開催によって東京や開催国である日本が長期にわたり享受できるとされた「社会資本」「経済的恩恵」「文化的財産」のことであり、そのレガシーがあるから五輪は開催するべきだ、という主張であった。
そうした彼らの思惑とは裏腹に、1年が経過し、目立つのは、負の遺産ばかりではないか。東京五輪開催のために新設された競技会場は上記のレガシーのうち、社会資本に分類される。開催に向け、東京都は恒久施設として「東京アクアティクスセンター」(競泳)、「海の森水上競技場」(ボート)、「有明アリーナ」(バレーボール)、「カヌー・スラロームセンター」(カヌー)、「大井ホッケー競技場」(ホッケー)、「夢の島公園アーチェリー場」(アーチェリー)の計6施設を新設した。
東京都が17年4月に公表した「新規恒久施設の施設運営計画」によると、有明アリーナは国内外のスポーツ大会に加え、コンサートなどのイベント利用で、年間3億5600万円の黒字運営になる見込みだ。
一方、他の5施設は赤字になる見込み。内訳はアクアティクスセンター(6億3800万円の赤字)、海の森水上競技場(1億5800万円の赤字)、カヌー・スラロームセンター(1億8600万円の赤字)、大井ホッケー競技場(9200万円の赤字)、夢の島公園アーチェリー場(1170万円の赤字)だ。
これら5施設に共通するのは、有明アリーナと異なり、施設の利用用途がスポーツ利用に限定されるという点だ。このため、収入を得るには大会の開催か、地域住民向けの一般開放くらいしか手段がない。
アクアティクスセンター以外はマイナー競技の施設のため、大幅な利用者増が見込めないという点も共通点として挙げられるだろう。競技人口が少ない競技にとっては、これらの施設は未来のメダリストを育成する場として一定の意義はあるかもしれないが、きれいごとだけでは難しい現実がある。
都が整備した施設以外では、新国立競技場も年間運営費が25億円近くかかるが、肝心の運営主体がいまだに決まっていない。運営主体が決まらなければ、その間の運営費は税金で賄われるため、実質的には赤字である。国民に社会資本を残すどころか、恒久的に莫大な赤字を産み続ける施設を残すことになっているのだ。
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