ワーケーション2.0に挑戦 地域の課題と魅力が混在するカオスに振り回された:「観光のついで」はもう古い(2/4 ページ)
8月某日、福岡の山奥の古民家にワーケーションに行ってみた。地域住民との交流を狙っていたのだが、筆者を待ち受けていたものは地域の課題と魅力が混在したカオスな体験だった……。
天然プールの誘惑で生産性アップ?
昼食を終えて仕事に戻ろうかと思ったところでオーナーから天然プールと絶景スポットツアーの申し出があった。古民家の裏には大きな茶畑があり、その間を進んでいくと絶景スポットに到着。目の前には茶畑と里芋畑、瓦屋根の家がぽつぽつと並び、山と青い空が眼前に広がっている。山間に吹く風は涼しく、東京で感じる熱風とは大違いだ。徒歩3分に位置する天然プールは山の上流から流れる透明度の高い水であふれており、ひんやりと冷たい。気持ちよさそうに飛び込む坂本さんを横目に時計を見る。あと10分で昼休みが終わる……。入りたい気持ちをぐっとこらえて、作業机に戻った。
山奥の古民家の通信環境や作業環境を不安視する声もあると思うので、ここで作業場を紹介しておこう。個人の作業場は1階の庭に面した廊下と、2階にあった。両方とも窓に面しており、気持ちの良い風が常に入ってくる状態だった。ドアなどの仕切りがほぼなく、開かれた家だったので、仕事中もインフルエンサーのTikTok講座や生活音が時折耳に入ってきたが、適度な雑音だったので集中力アップにつながった。
通信環境はWi-Fiがあったので特に問題はなかったものの、そこまでネットワークが強くなかったためビデオ会議や電話では苦労した。デフォルト設備として記載があった外付けモニターは見当たらなかった。オーナーに聞けばあったのかもしれないが、聞くタイミングを逃し諦めた。筆者は2日滞在だったのでそこまで支障がなかったものの、長期滞在やモニターを複数利用する人は避けたいトラブルだろう。
1日目、筆者の稼働時間は午前9時30分〜午後4時30分。普段は昼食後の午後2時ごろから眠気に襲われ生産性が下がるのだが、今日に関しては天然プールの誘惑がエンジンとなった。終業時刻を定めることで作業効率をどう上げるか、不必要な稼働をどう減らすかという思考が働いたようだ。
午後4時30分以降は同日の宿泊者と一緒に天然プールで遊び、そのまま車で町の銭湯に行き居酒屋で夕飯を取り帰宅した。庭に置かれているトランポリンに寝そべって満天の星を眺めたり、青年が蛍ツアーに連れて行ってくれたりと地域の魅力を存分に体感できた。
午後10時、そろそろ就寝と考えていたが、なぜかそこから1時間半ほど他の宿泊者が摘んだ茶の葉をすりつぶす作業に従事することに。地域住民との深い交流は叶わなかったものの、観光で訪れていたら体験できなかったであろう土地の魅力や特色に触れられた。
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