なぜ税金のクレカ払いは手数料上乗せなのか? 「キャッシュレス法」で対応進めるデジタル庁:金融ディスラプション(2/2 ページ)
税金など国への支払いのキャッシュレス化は、現在進行系で対応が進んでいる。5月9日に交付された通称「キャッシュレス法」では、年間1万件以上の件数がある手続きについてはキャッシュレス化する見込みだ。
不透明かつバラバラなクレジットカード手数料の上乗せ
ただしこれで全ての問題がクリアになるわけではない。手数料の問題だ。すでに一部の納付についてはキャッシュレス化されているが、その手数料については対応がまちまちだ。例えば、国民年金保険料の納付はクレジットカード決済手数料を国側が負担しているが、所得税などの国税の支払いでは納付者が負担している。
1万円ごとに83円の決済手数料を求める形で、率にすれば0.83〜1.67%の手数料を納付者が負担する。コンビニ払いなど他の納付方法についても手数料は発生しているが、クレジットカード払いだけが手数料を上乗せしている形だ。キャッシュレスを推進していながら手数料分だけ高くなるわけで、チグハグな形だ。
さらに民間では、クレジットカード会社の規約で現金払いとクレジットカード払いで価格を変えてはいけないとされており、公的支払いが例外扱いされているともいえる。
実際これは国会でも問題視され、キャッシュレス法についての衆議院の附帯決議においても、手数料の在り方についてデジタル庁は各府省庁と連携し検討することを求められた。
とはいえ、これはデジタル庁にとっても簡単な話ではないようだ。手数料は国負担、納付者負担と一律に決められればシンプルだが、なかなかそうもいかない。「基本的には歳入の性質、ニーズによって、統一が可能なのかも含めて検討していく」(占部氏)というのが現状。
さらに住民税や自動車税、固定資産税など自治体への納付のクレジットカード手数料をどうするかという問題もある。自治体への納付については、キャッシュレス法同様の法改正が地方自治法で行われ、法的にはキャッシュレス化が可能になっている。
こちらはPayPayやau PAYなどコード決済払いへの対応も進んでいるが、クレジットカードについてはやはり手数料を課す場合が多い。例えば東京都の都税では1万円あたり80円となっており、国税とも手数料が異なる。また、コード決済では手数料は発生しないことが基本で、この点でも不透明かつ混沌としている。
各省庁を横串で調整する役割を期待されるデジタル庁。公的支払いのキャッシュレス化をどこまで整理できるか。「関係省庁も多くシステムもあり、骨が折れるが推進していきたい」と占部氏は話した。
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