真の5G「5G SA」ドコモから登場 でもキラーアプリはスピードテスト?:房野麻子の「モバイルチェック」(3/3 ページ)
NTTドコモが「真の5G」とされる「5G SA」を、8月24日からコンシューマに対しても提供開始した。コア設備に4Gの設備を用いる現在のNSA(ノンスタンドアロン)方式の5Gに対し、5G SAはコア設備もすべて5G専用の装置を用いたネットワークシステムだ。
キラーアプリはスピードテスト?
ただ、以前から指摘されている通り、5G SAのメリットを本当に実感できるサービスが登場するのはまだ先という印象だ。5G SAの特徴である低遅延や多数端末接続はもともと法人に対するメリットが大きいと考えられている。法人が5G SAを継続して利用することで評価は高まっていくだろうが、一般ユーザーが5G SAのメリットを実感できるかどうかは、利用するサービスやアプリにかかっている。
現在提供されているサービスのほとんどは4Gでも十分快適に利用でき、5Gで通信していたとしても4Gとの違いに気がつかないことが多い。格闘ゲームをモバイル通信とモバイル端末でプレイすることもまれだろう。現状、5Gのキラーアプリはスピードテストアプリだとさえ言われる。
とはいえ、2Gから3G、4Gと通信技術は進化し、その世代世代を代表するサービスが生まれてきた。2Gでは音声通話だったが、3Gでメールや着うた、4Gではスマートフォンが登場して、高速データ通信を背景にSNSや動画配信が浸透した。
5Gで期待されているのはARやVR、メタバースだ。NSA方式の5Gから5G SAにだんだんと切り替わり、高速大容量、低遅延、多数端末接続の環境が全国津々浦々に整えば、操作性が向上したVRやARのデバイスとともに5Gらしいサービスが広がっていくのだろう。
一方で、キャリアが3Gで提案したテレビ電話(ビデオ通話)や動画配信が一般に広まったのは4Gのときだったので、筆者自身は、VRやAR、メタバースが一般的に利用されるようになるのは次の6Gかもしれないとも考えている。いずれにしても通信=コミュニケーション。人と人、人とモノだけでなく、5Gではモノ同士の通信も注目されているが、やはり人と人の新たなコミュニケーションサービスの誕生を期待したい。
筆者プロフィール:房野麻子
大学卒業後、新卒で某百貨店に就職。その後、出版社に転職。男性向けモノ情報誌、携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年にフリーランスライターとして独立。モバイル業界を中心に取材し、『ITmedia Mobile』などのWeb媒体や雑誌で執筆活動を行っている。最近は『ITmedia ビジネスオンライン』にて人事・総務系ジャンルにもチャレンジしている。
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